39 fukazawa ページ41
車を降りれば、春と夏の間のような生ぬるい風邪が俺らの間を吹き抜けた。
もう既に目の前の夜景はキラキラと輝いていて。
なのにやっぱり俺は、俺の少し前を歩くAちゃんに目を取られている。
「雨、降らなくてよかった」
そんなAちゃんは、俺のことを振り返ることもなく、吸い込まれるように夜景の方へ走って行く。
「転ばないように気をつけてね」
「はい、大丈夫ですから」
言ったそばから階段に躓いて「おっ」とコケそうになるAちゃんを慌てて支える。
その細い腕が消えそうなくらい儚い。
「すみません」
「バカじゃん」
「恥ずかし」
恥ずかしそうに笑っていたAちゃんは「あ、もしかして、これは胸キュンですか？」とボケ始める。
「なにそれ、ちがうよ」
笑いながらそう言う俺だけど、あーそうだよ。と言ってしまいたい。
こんな近くにAちゃんがいて、それだけで俺には胸キュンなんだよって。
告白されたい、追われたいなんて調子抜かして思ってた俺が、30にもなってこんなに誰かに夢中になるなんて、思いもしなかった。
うかうか遊んで、結婚もしないでダラっと一生を終えるんだろうなって思ってたから、本当に人生や巡り合わせは不思議でたまらない。
しかも、その子が“フツーの素朴な女の子”なんだから困る。
出会った頃は、恋愛ごっこのお相手にくらいに思ってたのに。
いっそのこと、言ってしまえば楽？
俺が好きだって言ったら、困る？
でも、この間
『深澤さんに、好きな人ができたら私はコッソリ身を引くので。その時まで私たち、“恋人”でいましょうか。』
なんて、珍しく照れ臭そうな顔して言ってたよな。
それ、信じていいの？
俺はもう、どうやら我慢できそうにない。
東京湾の水面にキラキラ夜景が反射して、目の前が眩しくて仕方ない。
それなのに、Aちゃんがもっと眩しいのだから困る。
「綺麗」
Aちゃんの優しい声が空気に溶ける。
柵に手を置いて「ずーーーーっと奥の方まで綺麗ですね。」と、潮風に髪を靡かせる姿が愛おしい。
全部が好き。愛おしい。
「…胸キュンね、俺、教えてあげよっか」
俺が言うと、Aちゃんははじめて俺を振り返る。
「え？」
「告白なら俺でもできるし」
「…告白？」
突然の俺の言葉に、少し微笑んで首を傾げた。
「夢に一生懸命なところも、すげぇあったかくて優しいところも、可愛い笑顔も、
…全部好きだよ。Aちゃん。」
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minmin(プロフ) - mizuiroさん» ギュンギュンを届けられて嬉しいです！夜は眠れているようで安心しました笑 (2022年5月24日 19時) (
レス) id: 1eb423545c (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃめちゃキュンキュン...いえ、ギュンギュンします！！続きが楽しみで夜しか眠れないです！！ (2022年5月24日 10時) (レス) @page41 id: c168ba2284 (このIDを非表示/違反報告)
minmin(プロフ) - rinaboyaさん» ありがとうございます！面白いと言われるのが一番嬉しいです😊頑張ります！ (2022年5月20日 22時) (レス) id: 1eb423545c (このIDを非表示/違反報告)
rinaboya(プロフ) - ほんとにこの小説が面白すぎます...これからも頑張ってください！ (2022年5月19日 23時) (レス) @page34 id: a9150a3a31 (このIDを非表示/違反報告)
minmin(プロフ) - 深澤りんさん» ありがとうございます！(^^) (2022年5月12日 20時) (レス) @page28 id: 1eb423545c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：minmin
| 作成日時：2022年4月18日 21時
