28 ページ30
ゴミ箱に雑に捨てられたタバコを見て、思わず「え」と声を漏らしてしまう。
「いや、大丈夫ですよ！そこまでしなくても！」
「ううん。もーやめた」
「深澤さんの趣味を奪うようなことしたくないんです」
「趣味でもなんでも無いよ。悪いクセみたいなもん」
「やめ時分かんなかっただけだから」と深澤さんは少しだけ笑って言う。なんでそんなに優しい顔をするのか。
にしても、あまりにも潔いやめ方をするものだから、少しだけ驚いた。
「…そこまでしなくても」
「Aちゃんのためなら、なんも苦じゃないけどね」
切長の目をふわりと揺らして、深澤さんは隣に座る私の手を握った。
その慣れた手つきに、男らしいすらりとした綺麗な手に、瞳に、不思議な気持ちになる。
少しだけ間が空いて、「ね？」と返事を促す深澤さん。
初めて見る深澤さんの表情だった。
…やっぱり深澤さんの様子がおかしい。
気を紛らわすように、何も言わずに、映画に目を向ければ深澤さんの私の手を握る手の力が、ぐっと強まった。
映画はもう終盤の終盤だった。
隣の深澤さんが、ビールをごくごくと飲み干していくのが気になっていれば、結局良いシーンはひとつも見れずに、いつのまにか映画は終わっていた。
主人公は泣いていた。きっと、付き合うまでしたのに別れたんだろうな…と察した。
優美なBGMとエンドロールがサラサラと私の脳を流れていく。
「呑んで眠くなったねぇ 」
深澤さんはそう言い、私ので手を握ったまま、うーんと伸びをした。
潰れたビールの缶が幾つかテーブルに転がっている。
「呑みましたね、かなり」
「俺は安心すっと、よっぱらうのよ。呑みたくなんの」
「…私に心許してくれたってことですか？」
「まぁそんな感じ」
「あと、ヤケクソもあるけど」も深澤さんは小さく言った。
その様子があまりにも親近感のある姿で、アイドルでモテそうでキラキラした姿ばかり見てきたから、本当に心を開いてくれているのだなと嬉しい気持ちになる。
ソファにころっと寝っ転がり、「てかさぁ」と口を開いた深澤さん。
「映画のカップル別れてたね」
深澤さんも、そこだけはしっかり見ていたようだ。
「ですね。恋人をやめるときって、結婚するか別れるかしか無いですもんね。」
私が言うと、深澤さんは「たしかに」と呟いた。
「私たちにも、いつか終わりがきますね。
深澤さんが恋愛のコンプレックスを解消して、私が恋愛を学びきったら。」
そんな言葉が不思議と口から漏れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
minmin(プロフ) - mizuiroさん» ギュンギュンを届けられて嬉しいです！夜は眠れているようで安心しました笑 (2022年5月24日 19時) (
レス) id: 1eb423545c (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - めちゃめちゃキュンキュン...いえ、ギュンギュンします！！続きが楽しみで夜しか眠れないです！！ (2022年5月24日 10時) (レス) @page41 id: c168ba2284 (このIDを非表示/違反報告)
minmin(プロフ) - rinaboyaさん» ありがとうございます！面白いと言われるのが一番嬉しいです😊頑張ります！ (2022年5月20日 22時) (レス) id: 1eb423545c (このIDを非表示/違反報告)
rinaboya(プロフ) - ほんとにこの小説が面白すぎます...これからも頑張ってください！ (2022年5月19日 23時) (レス) @page34 id: a9150a3a31 (このIDを非表示/違反報告)
minmin(プロフ) - 深澤りんさん» ありがとうございます！(^^) (2022年5月12日 20時) (レス) @page28 id: 1eb423545c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：minmin
| 作成日時：2022年4月18日 21時
