小さいあのこ。3 (ページ30)

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紫side

お家に戻って来てから、学校に行けたのは数日。
いつもお世話になっている誠也の大好きな担任の文一先生はお家に分かりやすいプリントを作って持ってきて下さった。病院でも特別授業をしてくれた。

学校の友達で会いたいって言ってくれるこはいるけど本人が嫌みたいで、遊ぶのは大晴くん、丈くんくらい。
昔からの幼馴染はあまり気を遣わなくていいらしい。
特に丈くんはめっちゃ来る。

野球のクラブチームに入っている彼は休みの日は練習で忙しいはずなのに、いつもやってくる。
お父さんに話を聞いたら誠也が大好きで会いたくて休んでいるとのこと。本人は『しゃあなしやから来てんねん』と言っていた。

誠也が『今日野球どうしたん』って聞くと
『コーチが腹痛やねんって』『今日はグラウンド整備の日やって』『朝雨降ってたから』って練習が休みだと嘘をついていた。

例年より日焼けしてない彼は今日も元気よく我が家にやってきた。

インターホンが鳴って、開けると「誠也は？今日は大丈夫？」と体調の確認をしてくる。
頷くと手土産の入っているであろう紙袋を僕に手渡してまるで自分の家かのようにスタスタと洗面台に直行し手洗いをしている。そういうところはちゃんとしている。

リビングに入り、ソファーにいる誠也の隣に座る。
『また来たん、暇やな』と言う誠也も内心嬉しそう。

「せっかく父ちゃんの特製プリン持って来たのにそういう事言うんや、俺が全部食べるからな」
「えっ食べたい」
「ダメです、暇って言った罰や」
「ごめんて」なんて言い争いをしている。

いつも丈くんは洋菓子店を営むお父さんのお店のプリンを持って来てくれる。誠也の大好きな食べ物の1つだ。

そしていつものようにテレビゲームを繋げて準備をしている丈くん。
手が動かなくなったときに誠也は「できない」とゲームで遊ぶことを諦めていた。
でも丈くんは『できるって。俺が右側動かすから、左側動かして』と2人で1つのコントローラーを使う事で解決した。

『ちゃんと左動かしてや、敵どっか行ってもうた』『動かしてるって』なんて今日も喧嘩しながら2人でぴったりくっついてゲームで遊んでいる。
最終的に丈くんが1人で遊んでいるのを笑いながら見てるけど楽しそうだからまぁいいか。
静かだなぁと思うと最終的に2人で仲良く眠っている。

仲良くしてくれてありがとうって伝えると
誠也のことが大好きな丈くんは照れくさそうに『しゃあなしやからな』と言っていた。