小さいあのこ。3 (ページ23)

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緑side

お父さんは家で仕事をしている事も多いけど、面会時間ギリギリまで病院にいるから割と遅い時間に帰ってくる。

お父さんの負担が減ればいいと思い、家事も僕に出来ることは引き受けてる。

僕も週末の自分の用事がない時や学校が早く終わった時、お父さんが仕事でどうしても行けない時にせーちゃんの所に行っている。

こんな生活はもう5年近く続いている。

お父さんの口癖は「晶哉いつもごめんね」。

慣れちゃいけないのかもしれないけどもう慣れた。

せーちゃんが病気になってすぐの頃、まだ小学生だった僕は何で自分がこんな思いをしないといけないのかって反抗的だった。

お父さんを独り占めして、せーちゃんがずるいとさえ思った。

病気のことだって、すぐ治るだろうってそんなに重く受け止めてさえいなかった。

久しぶりに会いに行ったとき、点滴をたくさん繋げて苦しそうにベッドに寝ていた。

もともと小柄で細かった弟がさらに小さくなっていて、やっと大変な病気なんだって分かった。

いつもと違う弟とどう接したらいいのか悩んだこともあり、友達と遊ぶからと会いに行かないこともしばしば。

それでもたまに会いに行くと、笑顔で「お兄ちゃん会いたかったよ」って言ってくれた。

お父さんにも誠也は晶哉のこと大好きだから、会いに行った日は元気だって言われた。

大きな手術をして、目覚めたとき
『お兄ちゃんいつもごめんね』『病気になってごめんね』って涙を流していた。

病気になったのは別に自分のせいじゃないのに、小さい弟に何言わせてるんだろうって。辛いのは自分なのに。

あの日から僕は変わろうと思った、大好きな弟のために。

今日は先生と話があると聞いていたから、何となく嫌な予感がして朝からソワソワしていた。

最近、調子が良くないのも知っていたから。

帰ってくるなりお父さんに大事な話があると椅子に座らされた。

紫「せーちゃんお家に帰してあげようと思う」

緑「え？外泊できるの？」

お父さんの言い方からいつもと違うような気はしていた。

涙を堪えながら、こちらをじっと見つめたお父さんに弟の今の状況を説明された。

紫「最後になると思う。ずっと病院にいたから好きな事をやらせてあげたい。」

でも父さんだけの力じゃどうにも出来ないから、また晶哉にいっぱい協力してもらわないととお願いされた。

緑「僕もせーちゃんと一緒に過ごしたい」

涙を流しながらそう答えると、「ありがとう」と優しく抱きしめてくれた。