94-sideF ページ44
今日は会社帰りにマキちゃんの家に寄って
得意のたこ焼きを振る舞っている
．
『すっごい。プロみたいです』
「んなことないよ(笑)」
『うわあ、まん丸お月様がいっぱいだ』
．
なんだその例え可愛いなと思いながらちょっと顔がにやけたりして
俺今めっちゃいい感じに新しい恋に進んでる気がする
．
「よし、お皿ちょーだい」
『はい！』
．
いつものようにさらにたこ焼きを乗せてマヨネーズとソースをかけ
青のりをトッピングしようとした時
．
『あぁ！パスパスパス！
その歯にはりつく恐ろしいやつはパス！』
「ええ！かけたほうが絶対うまいって」
『え〜絶対無理！だって歯とか唇とかにいっぱいつくし！』
「ふは、ついてたら教えてあげるじゃん」
『ほんとにそれが無理！』
「ん〜そっか」
．
あまりにも拒否されるものだから諦めて鰹節をかけてあげていた時
ふと思い出したのは青のりついてる〜？といつも見せてくるAで
でも最近は思い出すことはあってもそこまで動揺しなくなった
．
「ん、できた」
『やったあいただきまーす』
．
美味しいというマキちゃんの声の奥で
刹那ボーイズの曲がかかっていて
たこ焼きを回す手がピタッと止まった
．
『あっこれって刹那ボーイズですよね！辰哉さんがいたバンドの』
「ああ(笑)そう新曲、出たんだな」
『この曲は割と好きかも』
「そっか」
．
この曲が流れるなんて
Aのこと思い出しちゃうじゃん
そんなこと思ってるのなんて知らない彼女から
「今日泊まって行きますか？」と言われたのにも直ぐに反応できないほど
その時の俺の心は揺れまくっていた
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作者名：Fu-ka | 作成日時：2020年5月11日 21時
