65-sideF ページ15
「冷静になって考えると、やっぱり結婚したいのかどうかわかんないんだよね
ふっかと勢いで賭けしたけど」
「まぁ、結婚は勢いっていうからなぁ
冷静になったらできないのかもな」
.
いらっしゃい、という店主に軽く会釈していつものカウンターに座り
生とハイボールくださいと彼女の分も注文していれば
.
「この間会社の人にも''自分で稼いでるんだから結婚しなくていいじゃん''とか言われちゃって。それ聞いてからずっとモヤモヤしてる」
「なにに?」
「靴が好きでDianaに入ったけどこのままでいいのかなぁ…って漠然と不安があって」
「わかる、俺もだよ」
「ふっかも?」
「うん」
「アラサーになるとさ、歳とってるわけじゃないんだけど若くもない。なのに人生の一大事がまとめて来るよね
結婚、出産、仕事の責任…とか」
「あぁ一気に来るな」
「みんなどんどん未来を選んで進めていってるのに、わたしはなにも選んでない
結局現状維持のまま」
.
彼女がそう言ったところに頼んだお酒が渡されて無言で乾杯する
.
「まぁでも裏を返せば今の生活を自分で選んでるってことだろ?」
「多分、築き上げてきたものを失うのが怖くて一歩も踏み出せないだけなのかも」
「失うのが怖い、か…」
.
Aのその言葉がずしり、と俺にのしかかった
きっと俺が今までAに自分の気持ちを伝えられなかった理由も
当たり前にいつも側にいた君を失うのが怖かったからなんだろうって
.
「ふっか?」
「あぁ…まぁおつかれ?(笑)」
「なにそれ(笑)おつかれ」
.
お酒をグッと呑み
おいし〜と幸せそうな顔する君の横顔を見てると思っていたことが溢れてきて
「あのさA、俺…」
そう言いかけたところで
♪〜
着信が来て
また、君に言えなかった
108人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Fu-ka | 作成日時:2020年5月11日 21時