僕はまだ君を愛さないことができる (ページ44)

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久しぶりのなにもない休日。

《『ミッドナイトブルーのキトゥンヒール似合ってます』》

そう言ってくれたあの彼のことを思い出しながらスムージーを作っていた。

「キトゥンヒールなんて、よく知ってたなぁ」

知らぬ間に心の声だだ漏れでぼーっとミキサーを回し続けていれば

『なにぼーっとしてんの回しすぎよ』

「あぁ、ごめんごめん」

そうして作ったグリーンスムージーを一口飲めば

『健康診断どうだった？』

「まだ結果来てない

…あれ？サボテン復活してる」

『そうよ～、あんたの部屋で死にかけてたの
私が生き返らせてあげたの！』

「はいはい、ありがと～」

『あのねぇ、こうしてお水と日光と愛情を注いであげればサボテンも綺麗な花が咲くんだって！』

「ふーん」

『あんたのこともねぇ、29年間大事に大事に育ててきたのにいつになったらきれいな花が咲くのよぉ
お兄ちゃんは昆虫にしか愛情示さないから
あんただけは人並みに結婚して孫の顔くらい見せて欲しいの』

「うるさいなぁ、私も頑張ってるとこなの」

『あぁそういえばさぁ
この前テレビでやってたんだけど、Aみたいな高学歴なキャリア女子が一番結婚が遠いんだって』

「なによその統計」

『男はなぁ永遠に英雄になりたいんだ
仕事ができて稼ぎのいい嫁さんなんかもらってみろ、英雄になんかなれると思うか？』

「小さい頃男よりもデキる女になれって私に言い聞かせたのお父さんなんだけど」

『それはぁ…あれだ
本物の英雄をつかまえるためだ！
だからまぁ、Aはそのまんまでいいよ』

『あ～結婚するならDianaの課長さんの岩本さんくらいで手打っとけばよかったのに
その前の…あれとかぁ？』

『渡辺翔太』

『わざわざ言わなくていいのよ！！』

お父さんが名前を出して思い出すあの日の景色。
ムッとした顔でキッチンにコップを置きに行けば

『お前が忘れたのかと思ったんだよ！』

『わざとぼかしたんでしょう！？』

と急に喧嘩が始まる両親
しばらく言い合いしてる2人を見ていれば
急にとばっちりが来て

『大体男の趣味悪すぎるのよねぇあんたは
辰哉くんのほうがねぇ100倍良いんだから！』

ほらまたふっかの名前を出してくる

「何回言わせるの
深澤辰哉とは永遠に親友なの！
この話はこれでおしまい」

せっかくの休みなのに気分悪くなっちゃった