僕はまだ君を愛さないことができる (ページ11)

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―――12年前

チャイムが鳴り、休み時間の合図。
私は黒板に書かれた

''御手洗 A ''

を消しに黒板へ向かう。
消そうと黒板消しを手にしたとき

「オテアライ(笑)」

そう誰かが小声で言って笑った
それを筆頭に

『オテアライ～！！うぇーい！！！』

『転校生のトイレのAちゃん！！』

この名字のせいで揶揄われたのは何度もあるけどやはりいい気はしない

「佐久間、田口やめろよ」

誰かが私を庇った。
それが誰なのか確かめたくて振り向いたけど
名字をからかわれてイライラしたままだったからか

『あ、めっちゃ怒ってる』

『おぉ怖ぇ！！！』

『みなさーん！せーの！オテアライ！！
おい！言えよ！！！』

それでもやめない彼ら
ガキかよなんて思っていたら

「おい、いい加減にしろよ」

まただ。
彼に私の名字なんてなにも関係ないのに
ましてや私が揶揄われてるだけで
彼はなにも害はないのに。

『ほーい』

ようやく諦めた彼らを見て
次は私の方を見る
きっと心配してくれてるんだ
だけど素直じゃない私は''ありがとう'' なんて言えなくて
ただその場にいたくなくて
無言で教室を出た。