9 ページ9
「ふ、ふっか、起きて、重い。」
「……んん…。」
そうだこいつ寝起き悪いんだった。
つついても全く起きる気配のないふっかに途方に暮れる。そんな時腹に回る腕にぎょっとした。
「ふっか、ふっか私抱き枕じゃない。起きて。ほんと起きて。苦しいって！！」
ふっかは寝ている時、よく布団を抱きしめているのを見たことがある。
その時の締め付け具合と言えば変形するくらいの力だった。
そんな幼少期の若干のトラウマを思い出し、私の顔から血の気が引いていく。
どんどん力の籠って行く腕に悲鳴をあげつつ、もうどうにでもなれと言わんばかりに、ふっかの頭に……本の角で叩いて起こした。
「いっっっった！？」
「こっちの！お腹が！痛い！！」
やっと解放された苦しさと、起きたことへの安堵から一息つく。
ふっかはまだ寝惚けているらしく、ぽやぽやとした状態でこちらを見ている。
「……なんで俺の部屋にAが居んの？」
「もしここがほんとにふっかの部屋なら随分書物多いね？」
「…。頭痛い。」
「寝すぎたんじゃないかな！」
ヤバい。殴ったこと気付かれたら終わる。
私の命が。
慌ててその場から離れようと立ち上がった時、ふっかに腕を引かれた。
今日は随分、ふっかへ物理的に引っ張られる日らしい。その引力に逆らうことなく従うと、ふっかの腕の中に収まった。なんか人の匂い嗅いでいるみたいで鼻息が首にあたってくすぐったさと驚きで固まった。
「……Aだぁ。」
そんな顔。見たことない。
そのくらい破顔した笑顔を私に向け、ふっかはそのまままた眠りに付き……そうな所をまた私は叩き起した。
「校舎閉まるから！ほんとに起きて！」
「んんん。」
何とか荷物をまとめてふっかを立たせる。
行くよと声をかけても動かないふっかの腕を仕方なく引きながら職員室に日誌と鍵を置きに行った。当直の先生が「とうとうくっついたのかー！」なんて的外れなことを言ってきたのでちゃんと訂正しつつ、戻ってくる頃にはふっかはもう目が覚めていて、いつもの意地悪がまた始まった。
「……お前なんか言い返せよ。」
なんだかその姿に安心してしまって、いつもなら言い返す口は開く気すら起きなかった。
「ふっかはそのままの方が安心する…」
「なんて？」
「こっちの話…。」
初めて見たあんな可愛い顔に動揺したなんて、口が裂けても教えてやんない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：函娘 | 作成日時：2023年9月26日 20時
