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いきなり開いた部室のドアに、全員が驚いた。
しかしもっと驚いたのは、そこから入ってきたふっかの様子がどう見ても異常だった。
「来て。」
「え？ふ、ふっか？」
「来い。」
「ふっか！？」
真っ直ぐこちらに歩いてきたと思えば、その手は迷う手つきもなく私の腕を掴む。
その手の握力は凄く強くて、思わず顔を歪めたほど。
「辰哉、Aちゃん痛がってる。」
「宮ちゃん……。」
そんな私とふっかの間に入り込む宮ちゃん。
少し手の力が緩んだ気がした。
「…話したいこととかあると思う。でも辰哉、彼女を悲しませるような話はしないで。」
「なんでそんなことお前に、」
「辰哉。」
ふっかは舌打ちをして頭を勢いよく掻きむしった。どういう状況か上手く飲み込めない私は、きっと顔に出ていたと思う。
宮ちゃんはふっかをずっと見つめていた。
そう、睨んでないことが、ちょっと不思議だった。
「……わぁったよ。A、話があるからこっち来て。」
「う、うん。」
そう言ってふっかは私を連れ出そうと腕を引っ張る。
宮ちゃんは私たちをそれ以上止める様子もなく、ふっかは掴む力は緩くなっても引っ張る力は強いまま、部室をあとにした。
ふっかのいつもの空気と違うからか、時々すれ違う子達はふっかと私を2度見する。
私だって、こんな様子のおかしいふっかは初めてで。
どこに行くの？とか
どうしたの？なんて、到底聞ける空気じゃないことくらいわかる。
部室を出て、廊下を歩いて、階段を降りて。
その間足の速さなんか全然変わらなかったけど、途中で転びそうになってから少し遅くなる足に、私はどこか胸を締め付けられた。
でも足は止まることなく進んでいく。
無言のまま校舎を歩いて、外に出る。
外履きとか履き替えることも無く、そのまま中庭を抜けていく。
随分歩かせるな？と途中ちょっと思ったけど、ふっかなりの目的地があるみたいで、迷わず進んでいくその後ろをついて行くしか無かった。
「……ここまでくればいいか。」
「？」
そう言ってふっかは私に振り返る。
その顔を見て、私は息を飲み込んだ。
さっきは事件が起こった、なんてちょっと巫山戯て言ってみたけど、ふっかにとってそれは、
少なくともふっかにとってそれは大事件だったらしい。
｢どういうことか説明しろ。｣
そう言ってふっかは一気に私と距離を詰めた。
｢…まずこの状況説明してもらっても…？｣
その顔が怖くて、私は思わず、そう聞き返してしまった。
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作者名：函娘 | 作成日時：2023年9月26日 20時
