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「……いや、狭いからいいよ。」
「ほんとお前そういうとこだよ。」
「何が？」
女物の傘に男女が2人。狭すぎる。
だから友達を待とうと思ったのに。
これが彼氏とかだったら、そりゃいいシチュエーションだろうけど、生憎相手は最近までガン無視を決め込まれていたふっか。…良い雰囲気もへったくれも無い。
現に傘をわざと斜めにされてしまい、私の右肩はほぼ濡れてる。
「ちょっと！入れたいの！？入れなくないの？！」
「えー？どーしよっかなぁ。」
どーしよっかなぁ、じゃないわ。
結局意味の無い相合傘にムカついていたらいつも通るコンビニで傘が売っていた。
こんなことに使うのも癪だけど、ふっかの意地悪で段々と溜まるストレスに比べたら…と、言い聞かせて行こうとしたらカバンを取られた。
「泥棒？！」
「ちげえわ！そもそもお前が左に持ってるから、肩はみ出てんだろ！アホか！」
「え？…ｳｷﾞｬｯ」
カバンはふっかに取られるし、急に肩組まれてびっくりして変な声は出るし。
「なんだその声。」と笑ってるふっかを睨みつけるけど、私をからかって満足したのか上機嫌そうだ。
まぁ、買わずに済んだのならいいかと思って、私とふっかは結局、家に着くまで一緒の傘に入っていた。
会話は思ったよりも出来ていて、少し安心した。
｢ちゃんと鍵閉めろよ。｣
｢…。｣
｢おばさん達今日何時に帰ってくるんだよ。｣
｢いつもと同じくらいかな。｣
｢おばさん達が帰ってくるまで外出るなよ。｣
｢…。｣
｢変なやつ来ても開けんなよ。｣
｢……。｣
｢返事。｣
｢…はいはい。｣
でも家に着くなり、急に口うるさくなった。
よりによって、今日の私は月のもののアレのせいで機嫌が悪いこともある。
八つ当たりして折角話せた空気を壊したり、倍返しされる前にさっさと家の中に入ろうとした時だった。
｢おい。｣
｢…まだなんか……なにそれ…？｣
｢……まだコンポタあったかいから。｣
｢あ、あり、がとう…？｣
気まぐれなのかそうじゃないのか。
でも必ず、寒い時の月のものでしんどい時、彼はこうして暖かいものをくれる。
と言ってもいつ買ってるのか、殆ど冷めてる時が多いけど。
恐らく暖かかったであろうそれを受け取ると、ふっかは何も言わず家に入った。
怒りたいんだか優しくしたいんだかいまいちよく分からない私の幼馴染を褒める場所と言ったら、ここくらいかな。なんて思いながら私も家の中に入った。
てかなんで、私の生理周期知ってるんだろ。
怖いな。
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作者名：函娘 | 作成日時：2023年9月26日 20時
