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本当に出来心だった。
ふっかのロッカーからはみ出ている制服を少し摘む。
摘んだだけ。何もしてない。
なのに凄く恥ずかしいことをしている気持ちになって、手を引っ込めた。
そのタイミングだった。
「やっべ忘れ物……何してんの？」
「いっっったあ………」
ふっかが戻ってきた。
予想外だったことにびっくりして転倒する私。
見事に尻もちを着いてしまった。
「ちょ、ちょっと狭いところに…ていうかロッカー開けっぱなんて危ないから！」
私が！！
なんて言えるはずもなく。
ふっかは「わりわり。」と絶対悪びれた様子もなくロッカーを閉めた。ちゃんと鍵も閉めて。
なんだかそれを寂しと言うか、残念というか…そんな気持ちになった私が気持ち悪すぎて、すぐに頭からそんな考えを消し去る。
なんとなく顔を見られたくなくて、後ろを向いてモップをかける。
早く立ち去って欲しいのに中々ふっかの探し物が見つからないらしい。
「あっれぇ？どこ置いたっけな…」
「………。」
ちょっと摘んだだけなのにこの罪悪感と羞恥心。
そう、最近変に意識することが多くなったからだ。なんか、急に距離が近くなったような、そんななんか、そう、そのせいだ。
「なぁ、A、俺の時計どこいったか知らない？」
「………。」
きっとそのせい。
今まで素っ気なくて、会話もしてなかったのに急に詰めてきたせいだ。
そんなちょっと酷いことを思ってモップをかける。
「A…？おーい。」
「……え、あ、うん？！どした…の…」
振り返るとふっかが近くにいた。
それはもう、息がかかるくらいの距離で。
あ、ダメかもしれないと心臓が悲鳴をあげる。
自分が今どういう顔をしてるのかなんて、多分鏡を見なくてもわかる。きっと真っ赤。最近はよく真っ赤になることが多い。
「あったあった、ここにあんじゃん…どした熱？」
「ひぇっ…」
そう言って額と額をくっつけるふっか。
「…ちょっと熱いな。目眩とか？」
「ち、違う！風邪じゃない！！」
「でも熱いじゃん。」
「それは！！ふっかが近く…て？」
そこまで言ってやらかしたと思った。
これじゃ、『あなたのこと意識してます！』って告白してるようなもんじゃんか。
「近いから！！！近いせいでそうみえるだけだからー！！！」
掃除もそこそこに、それだけ言って、私は猛ダッシュで部室を後にした。
近いから意識しただけ。
そう言い聞かせて顔を冷やす。
間違ってもこれは認めちゃいけない。
認めたらきっと、バレてしまうから。
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作者名：函娘 | 作成日時：2023年9月26日 20時
