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待合室で呼ばれていくアナウンスを聞きながらボーッとテレビを見る。
ふっかは隣でずっとスマホをいじっていて退屈そうだ。…なんか申し訳ないな。
「…ごめんね、折角の休みなのに。付き合わせちゃって。」
「いーよ。おばさんの頼みだし。」
「暇だよね。」
「別にそんな暇ってほどでもねーよ。」
いや、どう見ても暇そうですけど。
なんなら何回欠伸してんだよってくらい欠伸してんじゃん。……あ、ほら欠伸。
「…これは単に昨日寝不足だっただけだから。」
「寝不足？またマリカ？」
「あー…そゆ事にしといて。」
「？」
この人、そんなにマリカ好きだっけか。
なんて思ってた時だった。
「オイ。」
「へ？どちらさ……ふっか！？」
突然影ができたと思ったら声をかけられ、顔を上げる。すると顔を上げ切る前に、ふっかが立ち上がった。
……正確には、浮き上がったに近かった。
男の人がふっかの胸ぐらを掴んでほぼ浮いてる状態にして立たせたのだ。
「な、何するんですか！ふっかを離して！！」
つい大声を出してしまい、周りがざわめく。
ふっかもその手を無理やり解いた。その拍子に私はふっかの背中に隠されたので、後ろからその人の顔を覗き込む。
「…辰哉、お前がそんな情けない男だと思わなかったよ。」
「なんの話し？」
「いくら女の子の親に言われたからって、男なら自分から着いてくるのが男ってもんだろ。」
「いや、今回のはほんとにうちの親に頼まれて…というか、あなた誰ですか…？」
「Aは俺の背中に隠れてて。…涼太、なんか勘違いしてねぇ？」
どうやらふっかとこの人は知り合いらしい。お互いを名前で呼びあってるから、それなりに親しそう…なんだけどこの空気からは微塵も親しさは感じられない。
ふっかが心配になって出ようとしても、器用に回された腕で背中にくっつけられているから覗くことも少し難しい。
「どうされましたか？！」
騒ぎを聞き付けた看護師さんがこっちにくる。
その一瞬力が抜けたふっかの腕から逃げて、二人の間に立った。
「バカ！引っ込んでろって！」
「涼太、さん、でしたっけ。ふっかは……深澤辰哉はそんな酷い人じゃないです。こんな私でも心配して、断ればいいのに母に言われて付き添ってくれたんです。それにこの人は、情けない人なんかじゃなくて、優しい人です！！」
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作者名：函娘 | 作成日時：2023年9月26日 20時
