思い想われ雨右回れ (ページ27)

今日:6 hit、昨日:33 hit、合計:81,634 hit

27 ページ27

それ以上言及されることも無く。
大量にあったブラウニーは1個も残らず食べられていて。帰る頃に、ママと私に「ケーキご馳走様でした。」って言って帰った。
素直に褒められたことと、完食してくれたことが嬉しかったのに、咄嗟についた嘘は、小さな錘になっていた。

…もう5年も前の話なのに、よく覚えてたねと言いたい。

「できないっていうか、気が向かないって言うか、腕が落ちた…？っていうか……？」
「じゃあ俺から頼むわ。」
「い、いい！！私から言ってみる！」
「…あっそ。」

ママに直接言われたらバレるしかないその話題を早々に切り、適当な話をして濁していく。
本当に適当な話。さっきの体育館の話や、今日のお昼とか。
こんな会話、朝だけだと思ってたら帰りもできるんだとちょっと感動した。
ただ朝と違うのは、帰りは私がよく話しかけてたことくらい。
話を聞いてる間のふっかはつまらなそうでも、かと言って大笑いすることもなかったけど、終始目を見て会話をしてくれた。

朝と同様、あっという間に家に着く。
また明日、というのもなんだか違和感があって、お互い黙って家に入ろうとした時だった。

「明日、病院行くぞ。」
「へ？」

びっくりしてふっかの顔をみて立ち止まる。

「おばさんからメール来てた。おばさん仕事だって。俺もお前も明日学校休みだし、付き添ってくれって。」
「そんなひとりで大丈夫だけど！？」
「明日な。」
「ちょっと！！」

一方的に取り付けられた約束に困惑しつつ、どうせ言った所で聞いてもらえる訳が無いので諦めた。

ふと、疑問に思う。

…あれ？ママとメールしてたなら、ブラウニーの話、ママにしたら良かったのに。

いやでもバレるか。バレたところで、５年も前の話だし、今更怒られても…いやでも今怒られるのかな…堂々巡りするその考えを切り上げる。
バレてないに越したこともないし、後でこっそり材料を買いに行こう。

5年ぶりに香るブラウニーの香りは、家の中にも広がっていく。
折角ならとママたちの分も作って、私も1人、自分の部屋で食べていたけど、…味大丈夫かな。

5年前とやや違うような気がしなくもないそれを包んでいく。

まぁ、ママが作ったって言ったし。不味いとは言われないでしょう。
明日病院に行く前に渡しちゃえばいいか。
なんて思いながら、ラッピングしていった。