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深澤辰哉が怒ならないなんて話を流したのは一体誰なんだろう。
｢………。｣
絶賛怒られ中な私はそんな話を流したやつに是非問い質したい。
何を見てそんなこと思った。
全くそんなことは無いぞと。
｢聞いてんの？｣
｢…はい。｣
正座も姿勢も崩すことなくふっかからの説教を甘んじて受けるのはもうお約束というか鉄板というかなんというか。酷く見慣れた光景ではある。そのせいで話半分に聞いていたけどもちゃんと本人にバレてる。
一方ふっかは私の椅子に座って足を組み腕も組み、視線も勿論上から目線。
傍から見れば暴君そのものの姿勢を見たことがないからそんなこと言えるんだと、私は心の中で反抗する。
本人に直接反抗しないのは、やった所でふっかの怒りが悪化して勝ち目のない口喧嘩で私が疲れるから。
疲れるくらいならいっそ黙ってやり過ごせばいい、と学んだのは中学あたりだった気がする。
そう、ふっかにはいつも怒られてばかりだった。
やれだらしないだ、やれ頭悪いだ、やれ鈍臭いだ、あげたらキリがない。
そんなにムカつくなら私と距離置いたら？と1度だけ提案したそれは更に火に油を注いだ所業だったらしく、その日は特に酷く怒ったので二度と言ってない。本人からも二度と言うなとガチ怒鳴りを食らったので言う気は微塵もないけど。
｢…ったく聞いてんのかよ。｣
｢気をつけるね。｣
｢何を？｣
｢え、…全部？｣
あ、ヤバい。また怒らせたようだ。
これは説教追加30分コースかもしれないなんて身構えていたけど、ママが途中でおやつを持ってきてくれたおかげで一時休戦。
の、隙間を縫って部屋を脱出した。
自分の家の、しかも自分の部屋だと言うのに、ふっかのお説教のせいで苦しいと言ったらありゃしない。
そんな私をみて、ママは｢また辰哉くんに怒られたの？｣なんて笑いながら言ってくる。
わかってるなら止めてくれよ。と、言ったところで無駄に終わるけども。
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作者名：函娘 | 作成日時：2023年9月26日 20時
