4 ページ4
. you
電話が切れて数分
雨は勢いを増して屋根に入っていても
濡れてしまう程になっていた。
何を考えるでもなく、ぼーっと、突っ立っていると
｢おい、A｣
腕を掴まれて初めて隣に照が来ていたことに気付く。
『わ、ごめん気づかなかった』
急いできてくれたんだろう、少し息切れをしてる照は
いつもと違い過ぎる私の様子に真剣な眼差しで問う。
｢いや、ほんとに、何があった？｣
『んー、失恋、しちゃったんだよね .. (笑) 』
｢... まじか ｣
お前もか、 と小声で呟いた照。
『え？』
「いや、俺今ふっかと飲んでんだよね、ほら前に話したことある、深澤。」
深澤さん、のことは前に照から聞いたことはあって。
照の高校の先輩で、モテるリアコだって。
..あと顔がでかい。
明らかな陽キャを感じるけど、
普段人見知りの私も、今は新しい人と関わりたいという気持ちさえあって。
『それ、深澤さん私が居て大丈夫かな。』
遠回しのその場に行きたいという
私の言葉に驚いた顔をした照
｢.. ふっかはいいよって。｣
『じゃあ、行きたい。照に話も聞いてもらいたいし、深澤さんとも話してみたい。』
｢よし、行きますか。」
『ありがとう』
土砂降りの中、照の持っていた傘に
入れてもらいながら店へと向かう。
同期とは言えど会社ではイケメンと噂される照。
相合傘には少し申し訳なさを感じ、
気持ち程度の遠慮で少し間をあけて歩く。
｢.. 結婚も考えてたよな｣
『うん。視野に入れてた、だから同棲もするつもりだったし、.. 』
今まであまり大きなすれ違いもなく
とんとん拍子で進んできた元彼との関係性。
この人と結婚するんだろうなあ、と思ってたし
その未来を信じて疑ってこなかった。
実感も何もなくて、まだ涙も出なかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 432人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2023年10月14日 13時
