1 ページ1
.you
｢別れよう｣
そう簡単には出ないであろう言葉を
突然呆気なく伝えられた。
『わかっ、た。 』
沢山、日が暮れるまで話し合ったが、
結局 そう言うしか選択肢が見つからなかった。
冷めきった2杯のコーヒーと
カフェにひとり残された私。
窓から見えた外は生憎の大雨。
私の気持ちを表しているのか
それとも嘲笑っているのか。
このままここにいる理由ももう無くて。
｢ありがとうございました｣
店員さんに会釈をし
仕方なくお店を後にする。
明るく暖かかったカフェと対照的に
暗くて冷たい外はより一層私を傷つけた。
予報外れの雨。
傘は持っていなかった。
家に帰る気分にもなれない。
｢... もしもし ？ ｣
『あーもしもし照？今何してんのー？』
会社の同期であり仲のいい照。
雨宿りのため入った屋根でおもむろに電話を掛けた。
電話なんて滅多にかけることもないから
戸惑ったような声で返事が返ってくる。
周囲が少し騒がしい。お店にでもいるんだろう。
｢今？今ねぇ、ちょっと飲んでるけど。つか急にどしたの？なんかあった？｣
唐突に掛けたのは私で、そもそもがダメ元なわけで。
まあそうだよなあ、偶然暇な訳もなく。
『いや、ぜんっぜん大丈夫！寧ろごめんね急に(笑)』
照の楽しい時間を私の私情で壊したくないし、
できる限りの明るい声で返答をする。
｢え、今どこいんの？外？？｣
『いつもの居酒屋の近くの花屋さんで雨宿り中〜』
雨音が聞こえる以上、変な嘘はつけず。
｢そりゃ偶然。今俺そのいつもの居酒屋にいるんだわ。(笑) ちょっとそこで待ってて。｣
飲んでるって言葉を聞いたあたりから
電話を切って帰るつもりが
間髪入れずに話し続ける照のペースに乗せられていた。
もう帰るし大丈夫だから、と言った私の言葉は届く前に
そこで待ってて。の直後に電話は切れていた。
巻き込んでしまった。
この時、この日から私の人生が
大きく変わることになるとも知らず。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 432人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫苑 | 作成日時：2023年10月14日 13時
