Osmanthus of smell【JN】 (ページ5)

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朦朧とした視界の中で、視線が交じりあったのはよく覚えている。

瞑った目が同意を求めるが羞恥が先立ち、同じく目を瞑った。

それが合図だったのか彼は私の首筋に顔を埋めた。

ほのかにくすぐったくて、でも心地よくて。

私はその心地良さに身を委ねた。

薄く吐息を漏らすと彼は儚げな目線で何かを訴えてくる。

応える余裕もなくてただただその視線を浴びて彼に身を任せる。

私は間違えたのかもしれない。

けれどこの暖かさを感じずにはいられなかった。

もう、ダメだ。

お酒のせいであまり意識がない。

落ちそうな意識の中で覚えていたのは彼のその目だった。

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朝、自宅の寝室のベッドで目が覚めた。

服は昨日着ていたものじゃなくていつも家で着てる部屋着だった。

昨日の夜のことを思い出そうとするけどあまり覚えていない。

起き上がってリビングに行くとテーブルの上に[鍵はポストの中にあります]とメモが残されていた。

私はあの人の顔をあまり鮮明に覚えていない。

そしてお互いの名前も知らない。

覚えているのはあの目線と、暖かさと、

キンモクセイの香りだけだ。