飛花落葉のように。【原神】 (ページ9)

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表面では紳士に笑い、内心では虎視眈々と相手を観察する義弟でさえ彼女とはよく酒を酌み交わすという。その話を知った時、ガイアの観察眼も落ちたかと、それから…あの子が気を許すなら、僕が疑う必要も無いのではと思ってしまった。騎士団とは違う、僕のやり方で、モンドを守るとは決めたけれど

やがて、彼女がふらふらと自由にしていても大丈夫なのはどこかのご令嬢だから、という噂があることをガイアから聞いたディルックは、それならばモラの出処に説明がつくと納得しかけ、しかしそれだと今までの経歴が一切不明であることの説明がつかなくなると、やはり悩んだ

そして悶々とした疑心を抱えたまま、エンジェルズシェアで顔を合わせるようになった少女の人となりを知り、ディルックはいくつかの事に気付いた。まだ若いだろうに酒に強いこと、大人びた…というより、いっそ古臭い言葉を多々使うこと、武芸に秀でているようであること、優しいのかそうではないのか、よく分からないこと。モンドに来る前の彼女も、結局分からぬままであること

これ以上の疑いは無駄だなと判断したのがつい最近のことであった

「本当のところはどうなんだ」

やっぱり嬢ちゃんもディルック坊ちゃんにお熱かと、先程の問いの真意を聞く。そうだねぇと首肯したのはその場しのぎだと知っていたが、それとは別にわざわざ自分の立つ日を選ぶ理由が知りたかった

「その場しのぎ？君にお熱は嘘じゃないよ」

「…………は？」

心外だと言いたげな少女にディルックは瞠目する

「先程、構わないって言ったろう？」

「…それは、彼等がどうせ忘れるからと…」

「それと、事実だから言いふらされても問題ないってことだよ」

「…………」

とうとう黙ってしまった彼を横目に少女は酒を煽った。どうにも彼は理解が追いつかないらしい。なにを…と呟く様子に、ふむと零して、彼女は人差し指を立てる。そのまま、トンッと、グラスの縁なぞって、ディルックに向けて微笑んだ

「ディルック。オーナーの注いだ酒というのは、それだけで価値があるんだ」

「……………結局、酒の話じゃないか」

私はそれを飲みに来ているんだよ、と少女は至って真面目に話す。少々眉を顰めたディルックは、右手で軽く前髪をかきあげ、息を吐いた。やはり酔っ払い共の言う意味など、何もなかった。ずっと知っていたことだ