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モンドで一番の酒場と謳われるエンジェルズシェア。今日も今日とて賑わう店内のカウンターには、久方ぶりにディルックが立っていた。黒シャツに白ベストといつもより薄着の上、彼の炎元素を表すように真っ赤な髪が高く結われた姿は、その人気も納得の美貌だろう。彼がカウンターに立つ理由は、自身をひけらかす為ではなく単なる情報収集のためだが


客の注文を聞いて袖を捲ったディルックは、また新しく客が来たぞと開いた扉に目を遣って、そこから見えた姿に「いらっしゃいませ」と紡ぎかけた言葉を呑み込んだ。しかし接客中の身の上、心中で思った通りに「また君か」とも言わない

そんな様子は気にも止めず、彼を認識した新しい客_少女は、些か安堵しているようだった

「?…どうかしたのか」

「いや、タイミングが合ったようで良かったと思って」

「いつもの事だろう」


迷うことも無くカウンター席に座った彼女は、所謂常連客の部類に入るのだろう。なにせディルックが店に立つ日は必ずいるのだ。彼が立つ日は決して多くなく、先に日程が決まっているわけでもないと言うのに。普段ここに立つチャールズによると、ディルックの居る日だけ店に来るわけではないようだけれど

彼は以前その事について、僕が店に立つ日に必ず居るのは偶然かと訊ねたことがあった。偶然なわけがないと、少女が逡巡することも無く即答したのを覚えている

「そんな偶然があるわけないだろう。もちろん君がいる日を狙っている」

そのやり取りを聞いたテーブル席の客達が盛り上がった様子で少女に問い、彼女が返した言葉も

「やっぱり嬢ちゃんもディルック坊ちゃんにお熱か!」

「うーん、そうだねぇ」

「いいねぇ若い!」

「坊ちゃんが羨ましいよ。こんな別嬪さんに」


その後に続いた言葉までは覚えていないが、ディルックには分かっていた。彼女の言葉に酔っ払い共のいう意味などひと欠片も含まれていないこと、軽くあしらう為の返しであって、問いすらまともに聞いていないことを

まったくとため息を吐いて、別嬪さんと称された彼女に目を向ける。そして、なるほど確かに、彼女は美しいと、納得してしまった。背丈や顔立ちはまだ少女の枠であって、己が彼女の外見を言葉で褒めるとしても「かわいらしい」という表現を使うだろうに。美しいと、その言葉が似合わぬ女性ではなかった

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藤宮(プロフ) - ルアンさん» コメントありがとうございます。この小説をとうぞよろしくお願いします (1月17日 0時) (レス) @page48 id: 75e16aadd4 (このIDを非表示/違反報告)
ルアン(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです😭💘 (1月14日 14時) (レス) id: 964364b64c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤宮 | 作成日時:2022年12月29日 5時

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