飛花落葉のように。【原神】 (ページ48)

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「神の心と相応の対価を、あちらが払ったと？」

「俺は公平な取引しかしない」

「正気じゃないな。君も、あちらも」

嫌悪の混じった顔のまま彼女はため息を吐いた
それ以上何も言わないのはきっと、この件について話す意味も無いと思われているんだろう。実際、今更何を言われたとて取引はもう覆せないところまできてしまっている

そこでふと、鍾離は思い至った

「そうは言うが、お前は違うのか？」

彼女の神の心は、きちんとその躰の中にあるのだろうかと

思えば目にしたこともないのだ。ひけらかすものではないにしろ、気が遠くなるほど長い時間を共にしていたのに、たったの一度も見たことがない
彼女がそれについての話題を口にすることもなかった

今、凡人として過ごしているのなら、彼女も神の心を手放しているのだろうか

好奇心からの問いにAは顔を変えなかった

「言ったろう。私の身は魔神のままだけど、と」

「…あぁ、そうだったな」

納得した鍾離は思いもしなかった。彼女が「神の心はある」とは言わなかったことを
信頼していたからこそ、言葉巧みに躱されているなんて、欠片も疑わなかったのだ

そして柔らかい笑みを浮かべ彼女と目を合わせる

「A、講談でも聞きに行かないか。やっと落ち着いたのだから、茶でも飲んでゆっくりしよう」

散策に出掛けてもいいぞ、と彼のどこか得意げな様子に首を傾げた

「君、往生堂は？」

「今はまだ、のんびり講義を受けさせる余裕はない。送仙儀式が終わったばかりだからな」

ならば尚更手伝いに行ってやればいいのにとAは思ったが、彼の仕事は知識を提供することであってその実行は葬儀人たちの仕事なのだろうか

「いや、講談にも散策にも行かない」

まぁ何にせよ、彼女は今日を共に過ごすつもりはなかった

当然共に過ごすだろうと思っていた鍾離は、衝撃を受けた顔で固まる。なぜ、と小さく呟かれた

「会いに行こうかと思ってる子がいて」

「甘雨達か？魈にはもう会ったのだろう？」

「あー…うん。甘雨たちにももちろん会うつもりだけど、今回は違うな」

ならば誰だという視線に、彼女は目を伏せる。脳裏で思い出したのは先日の戦いだった。人間たちの夜明けの日だ

そうだな、と零す

「あの日の功労者にかな」