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見届けてなんて言われても、Aにはよく分からない

「手を出すなということ?」

「どうだろうな。お前の思う通りにしていい」


聞いたところで、返ってくる答えはこれである。神が居ないまま、人と仙人だけでやっていけるのかを見る為に試すのだから、下手に手を出されては困るだろうに。見守るという意味で解釈してもいいのだろうか

うんうんと悩み始めてしまった彼女を見て、鍾離は助け舟を出すように口を開いた


「お前とともに建国したのだから、最後に、お前が居てくれたらいいと思っただけだ」

「ともに建国しただなんて!」

大袈裟な…!と彼女は慌てて否定する。その言い草に少しばかり落胆した鍾離は、そうかと小さく呟いた

「あ、いや…違うって…」


彼の情動に気付いてしまって、Aは己の発言を省みながらもごもごと口ごもる。茶を飲んで落ち着こうとして茶杯を持つも、先程飲み干したのだったと思い出して手を下げた。気付いた鍾離が茶壷から新しく淹れてやると、謝辞を力無く返される


「私は戦に手を貸しただけだから、君の労力とは比べ物にならないよ」

「それは過小評価が過ぎるだろう。尽力してくれたというのに」

「そ、そお?」

真っ直ぐすぎる褒め言葉に彼女の頬が薄く色付いた。その様子を見て可愛らしいとは思うが、そんなに単純でいいのだろうかと鍾離は心配がまさってしまう。彼女ははっとして、話が逸れたと零した


「見届ける、だったね。私なりにでよいのなら、その頼みしかと請け負おう」

覇気のある声が耳へ届いて、鍾離は破顔する。断ってもいいと言いつつ、断られていたら落ち込んでいたことだろう


「感謝する」

述べた声は己でも驚くほどに、安堵に塗れたやわからかなものだった





___往生堂の玄関でAを見送った鍾離に、ひとつ影が近付く。ひょっこりと顔を出した胡桃は不満気な顔をした


「あの人帰っちゃったの?顧客にしようと思ってたのに〜」

きっといつも通り、己の発言に困り顔をしているだろうと思っていた胡桃は、振り返った鍾離を見てぱちりと瞬く


「え、なになに。いい事でもあったの?」

「……そうかもしれないな」


かもと濁すには、胡桃が見た中でも一番幸せそうで穏やかな顔をしているというのに。鍾離はAの去った道を眺めるだけで、それ以上を口にすることはなかった

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藤宮(プロフ) - ルアンさん» コメントありがとうございます。この小説をとうぞよろしくお願いします (1月17日 0時) (レス) @page48 id: 75e16aadd4 (このIDを非表示/違反報告)
ルアン(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです😭💘 (1月14日 14時) (レス) id: 964364b64c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤宮 | 作成日時:2022年12月29日 5時

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