飛花落葉のように。【原神】 (ページ17)

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友が昔と変わらぬ仕草を見せたとき、それはいつかの楽しい思い出を彷彿とさせ、何かと心を喜ばせるものだ。鍾離は今日いく度目かのそれを感じ、自然と緩む頬を隠すように茶を含んだ。清心を使用した茶というのは苦味が目立つが、だからこそ甘味と合わせると美味いのだと言ってAは嗜んでいた。今日は甘味こそ無いが、彼女の気に召したようだから用意していて良かったというものだ

「それで、話というのは？」

ことりと茶杯を置く音がする。鍾離はAを見て、うむ…と、どこか緊張した様子で口を開いた

「そうだな、少し長くなるが」

「君の話はいつも長いよ」

間髪を容れず返された言葉にむっと眉を顰める。そうだったか？と思い返して、そうだったかもしれない…と思い至った。鍾離に自覚は無かったが、長い長いと言われたことはままある。彼の様子にAは眉を下げて、努めてやわらかい声を出した

「君は知識の披露では詳しすぎるほど話すが、自分の話においては言葉足らずだ」

「そうだろうか」

「うん。私達の過去が証明してくれるだろうね。つまりね、モラクス。いくら長くなっても構わないから、ちゃんと言葉にして、ということ」

私も気をつけるようにするよと、それは、彼女の悔やみの言葉だった。同じことにはなりたくない。もうあれにはうんざりしている。そうだろうなと鍾離は思う。随分と我慢を繰り返して決壊してしまったようだったから。無理をさせていた。誰よりも優しく、繊細な少女だったというのに

「…そうしよう」

深く頷いて、ぽつりぽつりと彼は話し出した

それは、ある日の商人の言葉がはじまりである

君は君の責務を果たした。今は休むがいい。彼は何度も自分に問いかけた。俺の責務は果たしただろうか、と。魔人戦争で生き残り、璃月を建国し、七執政の一人として彼は神座に鎮座し続けている。璃月を治めることが岩神の責務ならば、璃月がある限り、己が岩神でいる限り、責務を果たしたと言える日は来るのだろうか。来ないだろうと、鍾離は思った

「俺は、神の座を降りる気でいる」

神との別れを知らぬ璃月は、まだひとりでは歩いていけない。だから彼はひと芝居打つことにした。近々ある迎仙儀式を利用して、民と仙人、氷の女皇すらをも巻き込んで。この国全体を試そうと

目の前の神は、あまりにも甚大な計画を淡々と話した