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護法夜叉、金翼鵬王、降魔大聖。数多の仙号もつ璃月の少年仙人は、その夜、懐かしい気配を感じて顔を上げた。千年と変わらない、魔を降ろし続ける夜のことである。それは遠い過去で隣に、あるいは後ろにあった気配。誰よりもやさしく、もろいひとの気配。何も言わずに去ってしまった気配。もういちどと、願った気配

気のせいかと、零す。居るはずがない。この璃月に。彼女との「また」はもう来ない。ああ今日も、この地を守らなくてはと、夜叉は槍を握り直した





__少女が風立ちの地でライアーをつま弾いていた日に、岩晶蝶の姿でやって来た紙には、見慣れた字でひとつの文が記されていた。璃月港にある往生堂の客卿を訪ねに来てくれ、と。いわゆる呼び出しである。そうして彼女は今、往生堂であろう建物の前に立っていた

その呼び出しが誰からの、など大方予想がつく。己の旧友からであろう。ああ会いたくない、会いたくないなあと心中で独りごちるも、訪ねに来て…とは何年ぶりか。何か大事があったのかもと思い至ってしまえば、無視もできない

仕方があるまいと、手前に立つ女性に声をかけた


「君、往生堂の者か」

彼女はこちらを見ると、控えめな笑みを浮かべて頷く。己は渡し守なのだという

「こちらの客卿に会いたいのだけど」

「客卿殿に?少々お待ちください、確認してまいります」


会釈して中へと入っていく後姿を見送って、少女は盛大に息を吐いた。この建物からありありと彼の気配を感じる。やはり会いたくない、帰ってしまいたい。しかしそうもいかない。どうしたことだろうか

うんうんと唸っている間に、先程の渡し守のものとは思えない程バタバタと騒がしい足音が近づいた。ほとんど叩くようにして開いた扉から仄かな梅の香りが風にのって届いて、炎の瞳に、梅の光を落とした少女が顔を出す


「お客さん?新規契約?どんな葬儀でも完璧にこなすよ!もちろんあなたの葬儀でもね?」

にっこりと笑った彼女を「堂主!」と渡し守が諌めた

「この方は鍾離先生のお客さまですよ」

「鍾離さん?あぁ〜あなたが!話は聞いてるよ!」


どうぞ入ってと堂主とやらに誘導されて、足を踏み入れた。しょうり?と零した声は、溌剌と話す堂主の声にかき消されてしまう。この子が今の往生堂堂主なのだろうか、だとすれば随分と元気な子だと、少女は苦笑を零した

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藤宮(プロフ) - ルアンさん» コメントありがとうございます。この小説をとうぞよろしくお願いします (1月17日 0時) (レス) @page48 id: 75e16aadd4 (このIDを非表示/違反報告)
ルアン(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです😭💘 (1月14日 14時) (レス) id: 964364b64c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤宮 | 作成日時:2022年12月29日 5時

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