飛花落葉のように。【原神】 (ページ1)

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帰省のとき＿1 ページ1

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モンド城、郊外。

過去、騎士団を設立したモンドの英雄ヴァネッサが天空の島へと昇った地とされる場所、風立ちの地。その中心である七天神像の傍らにそびえ立つ巨木は、深緑の葉を添えた太い枝を四方八方へと伸ばしていた

その枝のひとつに腰掛けた、まだ成人していないと思われる顔立ちの少女は、ポロン、ポロン…と手にしたライアーをつま弾く。曲を演奏しているのか、はたまた気ままに奏でているだけなのか、その手の動きはやけに緩慢で、悠然としていた

目を伏せた表情も、可愛らしさの中にある翳りを思わせて、腰掛けているのが巨木などではなく窓辺の椅子であったら、深窓の令嬢に見えただろうに。しかし片方だけ投げ出された足や伸ばすこともなくだらしなく幹に預けられた背は、彼女の育ちを物語っている

「はあ、………うん？」

ポロンポロンとつま弾いていた片腕さえも動かすのが面倒だと思って、とうとうだらりと下げてしまおうとした時。その視界に一匹の晶蝶が入った

モンドで見る風晶蝶ではない。璃月で見れる、璃月にしかいないはずの岩晶蝶である

下げかけた腕を持ち上げて、岩晶蝶に手を伸ばす。少し近付くだけで逃げて行ってしまうはずのそれは、ひとつふたつと羽ばたいたあと迷うことなく人差し指に止まった。そのまま空気に溶けるようにして、二つ折りの紙切れへと姿を変える

身に覚えのある元素力。誰よりも慣れ親しんだ、懐かしくてたまらないもの。けれど、いやな記憶も引き連れてくるようなもの

ひしひしと伝わるそれに思わず、ぽとりとライアーを落とした。木の根元で研究なのか散策なのかをしていたイーディス博士が「きゃっ」と驚きに声をあげるも、謝罪に至るほどの余裕は今の彼女にはない。唖然とした様子で開いた紙切れを見つめて、はくりと口を動かすばかりだ

＿やがて落ち着いたのか、細く息を吐いて枝から飛び降り、ライアーを拾い上げる。博士に謝罪をしたのち紙切れを乱雑に懐に仕舞って、今度は根元に腰掛けた

「汚れるわよ」

「うーん、いいの。うん」

今度は確かな意思をもって、指先を動かす。そうして彼女が奏でたのは、旅立ちの詩だった