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トレイが怪我をしたと聞いたのは、後日のことだった
「足をやっておったな。トレイはハーツラビュル寮の主力選手じゃが、今年は見送りになりそうじゃ。勿体ないことよ」
Aは昼食中にリリアが零していた言葉を思い出す。クラスに松葉杖で来ていたらしい。それから、今日のマレウスは機嫌が良さそうだったなと、それも思い出した
「昨夜、面白いものを見つけてな。あれをお前が気に入る理由が少し分かった」
「私が気に入った、面白いものですか」
何のことだろうかと首を傾げる彼女をマレウスはただ愉しげに微笑んで見つめるだけだった。昨夜ならば、マレウスがまたひとりで徘徊さながら廃墟巡りをしたことは知っている。シルバーとセベクが「探した方がよいのでは」と所在なさげにしていたからだ。けれどその他に心当たりは無い
彼の言う「面白いもの」が自身の執心するユウであることに彼女が気付くのは、まだ少し先のことだ
──これでいいか、と。トレイへの見舞い品を購買部で購入したAは、こちらへ手を振るサムに挨拶を返して場を後にした
リドルがオーバーブロッドした後の彼への見舞い品とラインナップが似通ったが、まぁいいだろう。フルーツ類を嫌う人ではなかったはずだ
そのまま寮を訪問した彼女をトレイの部屋へ通したのは、知らぬ寮生だった。珍しいことに、Aの知るハーツラビュル寮生は皆揃って出払っているという
「こちらどうぞ。ささやかですが、見舞い品です」
「──あ、あぁ、ありがとな」
明らかに「思わぬ客だ」と思っている様子のトレイに、バスケットを押し付けた。こちらが部屋に入ってからずっと固まっていた彼は、石化が解けたようにそこでやっと動き出す
その態度に、私が自主的にここへ来るのはそんなに意外かと眉を顰めた。彼のことは食えない人だと思っているが、かと言って嫌いではない。頼れるひとなのだろうと思う
「…そんなに動揺しないでくださいよ。来ない方が良かったですか？」
「……いや、嬉しいんだ。悪い、驚いてな」
「驚いたのは、ええ、十分伝わりました」
「ははっ、お前は俺が苦手だと思ってたが…違ったのか？」
笑みと共にかけられた問いにAは大きく瞬いて、目を伏せた
「どうでしょう。嫌いでは、ありませんけどね」
それは囁くような、和やかな声だった
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藤宮(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます〜！この小説をどうぞよろしくお願いします！ (8月17日 23時) (
レス) id: 70681114dc (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (8月12日 0時) (レス) @page25 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 晏昊さん» ありがとうございます。長らくお待たせしましたが亀更新で頑張ります〜！ (2023年3月6日 0時) (レス) @page21 id: 73feed36fe (このIDを非表示/違反報告)
晏昊 - 好きすぎて一気見しちゃいましたw続きがすごく気になります！頑張ってください！待ってま〜す!!! (2022年5月3日 1時) (レス) @page21 id: 92be24dccc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤宮 | 作成日時：2022年1月5日 2時
