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先に絨毯に乗ったカリムから差し出された手を、Aは取る。慣れない動作にモタつけば、慣れたように彼が支えた
高くなった視界に少し身震いをして、恐怖を逃がす為に息を吐く。横でカリムが絨毯をひと撫ですれば、それに呼応した絨毯が高さを上げた
また遠くなった地面に思わず力を込めた彼女の手を、カリムは包み込むように握り返す。目線を上げれば、かち合った瞳からは見守るような優しさを感じて、ふっと笑えるくらいには安心できた
「A」
彼の呼びかけに誘導されるように、心に出来た余裕と共に顔を上げる。そこにあったのは、それはそれは大きな月
もう二度と、見ることはないと思っていた。トラウマのせいで高い場所が怖くて、箒に乗ることすら出来ないような己には、絨毯に乗ることでしか見れない月。その絨毯の持ち主にだって、もう会えることは無いと思っていたのに
己の意思で選んだ学園で会えた。本来ならば通うことの出来ない男子校に、特別だからと許された在学。望むことなく持ち得た「特別」を好んだことは無いけれど、今だけは素直に受け入れられた。旧友と再開できた喜びに、私をうみ落とした神に感謝できた
「＿＿ねぇ、カリムくん」
「ん？」
月から視線を外し、スカラビア寮＿その周りへと目を向ける。今は宴の最中、故に使われているのは、人工的な光が付いているのは中央の大広間だけ。周りは真っ暗。だけれど、寮から離れた彼女にもその形が見えていた。この大きな月が照らしているから
砂漠の細かい砂が、スカラビア寮の金の装飾が、月の光を受けて輝く様子はなんとも美しくて。目の前にある月が、もう一度見たいと願ったあの月と変わっていなくて
「すごく……すごく、きれいだね」
バルコニーでたった独り、遠く小さい月を眺めていた幼い自分が、報われたような気がした
Aの言葉を受け、カリムは月から彼女に目を移す。そうして、月に魅せらたような彼女の横顔に瞠目した
神から直接与えられた、この世で唯一といわれる彼女の、黒髪に見えるほど深い藍色の髪が、宝石のような朝焼け色の瞳が、月光を透すさまがあまりにも美しい
「…あぁ、きれいだ」
カリムは呟き、思い出す
そうだ、今日のようなあの日だって、この大きな月よりも、小さな愛し子に目を奪われていた
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藤宮(プロフ) - 紅さん» ありがとうございます〜！この小説をどうぞよろしくお願いします！ (8月17日 23時) (
レス) id: 70681114dc (このIDを非表示/違反報告)
紅 - とっても面白いです!!続き楽しみにしてます! (8月12日 0時) (レス) @page25 id: b3496c9ef0 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 晏昊さん» ありがとうございます。長らくお待たせしましたが亀更新で頑張ります〜！ (2023年3月6日 0時) (レス) @page21 id: 73feed36fe (このIDを非表示/違反報告)
晏昊 - 好きすぎて一気見しちゃいましたw続きがすごく気になります！頑張ってください！待ってま〜す!!! (2022年5月3日 1時) (レス) @page21 id: 92be24dccc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤宮 | 作成日時：2022年1月5日 2時
