45・誰も知り得ないコト。 ページ50
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初めて会った時、仲良くなんてなれないなと思った。
いい名前だねと言ったのも。図々しくも私だったらなんて言ったあの言葉も。
(全部、嘘に決まってる)
「五条さん。なんでアイツ連れてく来るんですか」
「Aのこと?同い年がいた方がいいと思って。それに恵より呪術界にも詳しいからさ」
必要ありませんと言う俺に「はいはい」と面倒くさそうにあしらって、いつも躱される。何度言っても連れて来る。善意なのだろうが、はた迷惑だ。
「恵。Aちゃんね、凄くいい子だよ」
一片の疑いもない笑顔で津美紀が言った。あぁ、簡単に絆されたんだなと呆れて、わざとらしくため息をつく。
いつまで経ってもアイツは定期的に俺たちの様子を見に来て、たまに家に泊まった。そしてそんな日は津美紀と二人で内緒話をする。
(…鬱陶しい)
ずっとそう思っていた。
「恵だって、もう分かってるくせに」
今度はムッと口を曲げて言った津美紀の言葉で、頭を強く殴られた感覚を受ける。そこで気付いた。
アイツへの警戒心など、俺はとうにどこかへ置いてきてしまっていたのだと。
_ねぇ伏黒くん。
_恵くん。
_恵。
年々変わっていく呼び方は何故変わったのだろうか。
あぁ、そうだ。俺がそう呼んで良いと言ったんだ。…なんだ。結局、絆されている。
『恵〜、お風呂上がりましたよー』
愛想が良いわけでもなければ性格が良いわけでもない俺に、他と同じように平等に笑いかけるA。
きっと津美紀が呪われたことで俺を心配して、会いに来てくれたんだろう。
(そういう所は津美紀と同じ善人、)
でも、Aは決して善人ではない。
アイツが自分の決めた人間以外に情をかける奴では無いことを俺は知っている。普段、他人に見せる笑顔が本物じゃないことも。
Aの本性を、その内側を、一体何人が知っているだろうか。そう多くはないだろう。
(俺だって、全部は知らないんだろうな)
『?……なに?』
「いや、」
首を傾げるAの髪から一滴の水が浸った。こういう時お互いが成長したことを実感する。
(…俺と同じ匂い)
別に、俺が全てを知っていなくてもいい。
今この瞬間、Aが誰の匂いを纏って何をしているかなんて、最強術師でさえ知りえないのだから。
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藤宮(プロフ) - さくらさん» コメント、応援ありがとうございます!!頑張りますね、これからもお付き合い下さい! (2020年10月29日 20時) (レス) id: 6816ef7f40 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - コメント失礼します!楽しすぎて一気に見てしまいました!これからも応援してます!更新頑張ってください!! (2020年10月22日 21時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 露亞さん» 申し訳ないんですが、ムウさん?という方ではないです…。好きな作者さんなんですか?応援ありがとうございます!ご期待に応えられるよう頑張ります!! (2020年7月5日 22時) (レス) id: 9eeede9267 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ムウ…さん?あ、違ったらごめんなさい!更新頑張ってください!! (2020年7月1日 19時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - みーさん» いやもう、コメント下さるのが既に優しいっていうか…本当ありがとうございます!( ´ ` *) (2020年5月9日 14時) (レス) id: a3f9ffe9e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年3月15日 4時