37・蒼色の優しさ ページ39
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「あの女になんであんなこと言ったの?」
『…気分?』
だって恵くんは友達だし。てかあの女って…呼び方よ。
(あ、)
はっと思い出して「悟を使うようなことしてごめんね」と言うと、別に困らないから良いらしい。流石は悟。
「A、もう無茶はしないように」
『………』
うーーん…。
私だって呪術師になるつもりだし、無茶しないようには無理だと思うんだけど。それに頬を叩かれるくらい大したことないのに。
『分かったよ』
「はいって言って」
『………分かった』
「A?」
誤魔化そうと答える私に、悟は圧を掛けるようにゆっくり名前を呼んだ。
私を心配してくれているのだろうから、頷くべきだけど…無理だろう。だって約束しても破る自信しかないって。
そう思ってきゅ、と口を固く閉じる。
「仕方ないなぁー…」
先に諦めたのは悟の方で、やれやれと首を振っている。後に聞こえた「まぁ俺が守るつもりだし、」という呟きは聞かなかったことにしよ。
『それで悟、今日は何の御用で?』
「今日……ホントは恵たちのとこ行こうと思ってたけど、いいや」
『ほぉ?』
「今日は僕といろんなとこ行こ」
優しい微笑みに甘えたような声を添えて言う悟のその提案に、数回瞬きを繰り返した。えっと、どういう意図?
『だ、大丈夫?誘拐と間違われない??』
「ないない。僕イケメンだから」
『いや一番心配』
上から下まで真っ黒なその姿にサングラスで子供連れとか、マスクも着ければ超不審者。「このイケメンに気をつけて」って言って歩きたいくらいだわ。
『あのね、別に気を使ってくれなくても大丈夫だよ』
「はーい黙っててくださーい」
『ちょ、まてまて』
心配しなくていいと言ったはずなのに。悟は強引に私の腕を引いて連れていこうとする。待ってこれこそ誘拐じゃんか。
(_本当に、)
いつ通りが一番いいのに、らしくもなく気を使おうとする。悟のそういう、ちょっと不器用な優しさは好きだけど、今はもう十分だ。
『あんなの慣れてるから』
「……慣れないでよ」
悟は私に振り向いて、手をゆっくり握り直す。
「慣れないで、もっと甘えていい。溜め込まれたら困るんだって」
その言葉に彼の親友を思い出して、少し微笑む。
『ごめん。…ありがと』
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藤宮(プロフ) - さくらさん» コメント、応援ありがとうございます!!頑張りますね、これからもお付き合い下さい! (2020年10月29日 20時) (レス) id: 6816ef7f40 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - コメント失礼します!楽しすぎて一気に見てしまいました!これからも応援してます!更新頑張ってください!! (2020年10月22日 21時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 露亞さん» 申し訳ないんですが、ムウさん?という方ではないです…。好きな作者さんなんですか?応援ありがとうございます!ご期待に応えられるよう頑張ります!! (2020年7月5日 22時) (レス) id: 9eeede9267 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ムウ…さん?あ、違ったらごめんなさい!更新頑張ってください!! (2020年7月1日 19時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - みーさん» いやもう、コメント下さるのが既に優しいっていうか…本当ありがとうございます!( ´ ` *) (2020年5月9日 14時) (レス) id: a3f9ffe9e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年3月15日 4時