34・あの頃と同じように ページ36
·
後ろから聞こえた声に振り向けなかった。
会いたかったけど、会わない方が良かったかもしれない。どんな顔したらいいか分からないから。
行き場のない手で口を覆って、ぐっと空気を飲み込む。
『そう見える?』
絞り出した声は震えていて、どうしようもなく泣きそうだった。傑は三年前と殆ど変わらないような声だったのに。
「ははっ、今にも泣きそうだね」
軽く笑った彼に「うるさい」と悪態をつく。
私はこんなに動揺してるにも関わらず、傑は何ともなさそうで。それが憎たらしくて腹が立った。
(どうせ、)
目の前に現れたのも、私が貴方を追って来るのも、計画内だったんでしょ。
『なんで今更ここに?』
「会いたくなった、からかな」
(……………は?)
少し照れくさそうに、でもそれを悟らせないように言った傑の言葉に耳を疑った。
会いたくなった?
『は、巫山戯ないでよ』
私はずっと、
堪えていた涙がぼろぼろと零れ落ちるまま振り返れば、傑は驚いた顔をしている。
ばかみたい。ずっとずっと悩んでたのに。傑のことを考えてたのに。ばかみたいじゃん。
だって傑、別れの挨拶もしてくれなかった。何も言わずに行ってしまった。三年間何の連絡も無かった。
『私から会いに行けば良かった?そしたら話でもしてくれた?』
「…A」
してくれない。話してくれないでしょ。
せめて一言でも別れを言ってくれれば良かったのに、傑が日常だけを残して行ったりするから、私は傑を敵対視できない。
私の記憶じゃ、まだ友達のまま止まってる。
「A」
こうなるかもしれないって分かってたのに、傑はきっと大丈夫だと安心して、また今度と後回しにして目を背けてしまったから。
合わせる顔がない。
まだ友達だと思っている私に、何もしなかった私に。
『っ私は、』
「Aっ」
ぎゅと抱きしめられた。
自分の気持ちだけ一方的に吐き出していた私に、傑は心底嬉しそうに笑っている。
『え、なに、』
なんで笑ってるの。
私の疑問に応えるように傑は笑い声を零した。
「はは、まだ友達だと思ってくれてたんだな」
(あ、)
その表情は、まるで彼が学生の頃のようだ。
568人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤宮(プロフ) - さくらさん» コメント、応援ありがとうございます!!頑張りますね、これからもお付き合い下さい! (2020年10月29日 20時) (レス) id: 6816ef7f40 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - コメント失礼します!楽しすぎて一気に見てしまいました!これからも応援してます!更新頑張ってください!! (2020年10月22日 21時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 露亞さん» 申し訳ないんですが、ムウさん?という方ではないです…。好きな作者さんなんですか?応援ありがとうございます!ご期待に応えられるよう頑張ります!! (2020年7月5日 22時) (レス) id: 9eeede9267 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ムウ…さん?あ、違ったらごめんなさい!更新頑張ってください!! (2020年7月1日 19時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - みーさん» いやもう、コメント下さるのが既に優しいっていうか…本当ありがとうございます!( ´ ` *) (2020年5月9日 14時) (レス) id: a3f9ffe9e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤宮 | 作成日時:2020年3月15日 4時