32・黒髪のあの子 ページ34
·
傑が居なくなってから約三年ほど経ったある日。
「A、着いたよ」
『……何処ここ』
「埼玉ー」
いや、うん。それはそうなんだけど。
可笑しいな、さっきまで家に居たのに(移動中に寝てただけ)
しかも古びた一軒家の前で、髪も目もツンツンした男の子と自己紹介させられている。
「ほらA！自己紹介しなきゃダメでしょ！」
『はぁいパパぁ』
ねぇ違う。前回では私達シリアスしてたの。
乗った私も悪いけど、とふざけた口調で話す悟の足を踏みながらその子を視界に入れた。
『初めまして、夜鎮Aです』
「…………伏黒、恵」
いい名前だねと言うと彼は顔を逸らす。照れてるわけではなさそうだ。むしろ……
「じゃあ後は、同い年の二人でよろしく〜」
ひらひらと手を振ってどこかへ行く悟。えっマジ？
悟が私と伏黒くんを会わせた時点で、仲良くしろって事なのは分かってたけど、今さっきお気に召さないこと言っちゃったみたいだよ私。
「…同い年かよ」
超気まずいと思っていた矢先、呟きが聞こえた。
『みたいだね、なんで？』
「年上かと思った」
へぇ、と返す。
タメと話した事くらいあるのに、呪いを知ってる子というだけで何を言えばいいか分からない。
いつの間にか伏黒くんは家の中に入っていて、放置かと思えば「入れば？」と言ってくれた。
(優しい！！)
そしてぶっきらぼうな優しさが何故か可愛い。
嬉しくてヘラヘラ笑いながらついて行く私に、彼は今度は困ったように目を逸らす。
というか、家に私が入って良かったのかな。
「なぁ、さっきの」
『うん？』
「いい名前ってやつ、本心じゃねぇだろ」
伏黒くんは目線を下げたまま言った。
結構、話し方っていうか…中身が大人びてるんだなぁと思いながら「そういうわけじゃないよ」と言うと、彼は顔を歪める。
「…女みたいな名前って思うだろ」
やっぱ名前の話は良くなかったみたいじゃん。いい名前って言ったの撤回したい。
『でも恵って幸せって感じしない？』
「…？」
『名前負けしないよう、幸せにならないとって思うかな』
図々しくも、私だったら。
そう笑ったら、彼はポカンとしていた。
そのあと下を向いて、顔を逸らして。
「……そうかよ」
と、小さく呟いた。
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藤宮(プロフ) - さくらさん» コメント、応援ありがとうございます！！頑張りますね、これからもお付き合い下さい！ (2020年10月29日 20時) (
レス) id: 6816ef7f40 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - コメント失礼します！楽しすぎて一気に見てしまいました！これからも応援してます！更新頑張ってください！！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 露亞さん» 申し訳ないんですが、ムウさん？という方ではないです…。好きな作者さんなんですか？応援ありがとうございます！ご期待に応えられるよう頑張ります！！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: 9eeede9267 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ムウ…さん？あ、違ったらごめんなさい！更新頑張ってください！！ (2020年7月1日 19時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - みーさん» いやもう、コメント下さるのが既に優しいっていうか…本当ありがとうございます！( ´ ` *) (2020年5月9日 14時) (レス) id: a3f9ffe9e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藤宮 | 作成日時：2020年3月15日 4時
