検索窓
今日:18 hit、昨日:2 hit、合計:436,658 hit

30・決意と断り、計算内 ページ32

.




『(うん、そうだ。)』




私にはやるべきことがあるのだ。



迷っていた九十九さんへの返事は迷うまでもなかった。いや、迷ってはいけなかった。



___もっと強い意志を持たないと。成し遂げられない。



よし、と軽く拳を握って決意を改めたAはベンチに座り直す。

今日は九十九由基に会うため、前と同じ公園で待ち合わせをしていた。







___暑いなぁ。



Aが思ったとほぼ同時にしたバイクの止まる音。




「こんにちは」




朗らかに笑う美人がそこに居た。彼女に向けて、Aも出来るだけ柔らかく笑う。

緊張しているのだ。だって、私が今から告げる言葉は彼女にとって良いモノではないから。



今日は都合をつけてくださってありがとうございます、と当たり障りのない挨拶を終えたAは静かに息を吐いた。




『あの、九十九さん…』

「うん」

『えっと、、』




ぐだぐだと言葉を詰まらせている自分に、子供を宥めるような顔で微笑んだ九十九を見たAは、やっとの思いでまた口を開く。




『私、九十九さんと一緒には行けません』

「いいよ。わかった」




覚悟をして、ごめんなさいと頭を下げたAにとって、それはあまりにもあっさりとした返しだった。

拍子抜けしたというように九十九を見上げる。




「残念だけどね。君が決めたなら構わないよ」




そう力強く笑った九十九に、普段バカ騒ぎする高校生くらいとしか交流がないからか、Aは少なからず憧れを抱いた。かっこいい、と。




___Aが返事を伝えた後は少し話して解散となった。



それから暫く、九十九は『お身体に気をつけてください』と言ったAの帰って行った方向を見ていた。









___残念。







夏油くんが "非術師を皆殺しにすればいい" と言ったことを知れば、優しいAちゃんは
夏油くんが事を起こしてしまわぬよう、道を踏み外さぬよう、敢えてこっち側に来ると思ったのに。




そのために、聡明なあの子のギリギリ気づく範囲で口を滑らせたのに。




_初めて会った時は泣いてばかりいたのに。




原因療法が成功すれば術師も非術師も無くなり、夏油くんの気持ちも解決するかもしれない。けれど彼女には決意があるらしい。




「子供の成長って早いな」




九十九の零れ落ちた声だけがその場所に残っていた。

31・気づけなかった心の内は→←29・嘘ついたら針千本



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (211 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
568人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

藤宮(プロフ) - さくらさん» コメント、応援ありがとうございます!!頑張りますね、これからもお付き合い下さい! (2020年10月29日 20時) (レス) id: 6816ef7f40 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - コメント失礼します!楽しすぎて一気に見てしまいました!これからも応援してます!更新頑張ってください!! (2020年10月22日 21時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 露亞さん» 申し訳ないんですが、ムウさん?という方ではないです…。好きな作者さんなんですか?応援ありがとうございます!ご期待に応えられるよう頑張ります!! (2020年7月5日 22時) (レス) id: 9eeede9267 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ムウ…さん?あ、違ったらごめんなさい!更新頑張ってください!! (2020年7月1日 19時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - みーさん» いやもう、コメント下さるのが既に優しいっていうか…本当ありがとうございます!( ´ ` *) (2020年5月9日 14時) (レス) id: a3f9ffe9e3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:藤宮 | 作成日時:2020年3月15日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。