30・決意と断り、計算内 ページ32
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『(うん、そうだ。)』
私にはやるべきことがあるのだ。
迷っていた九十九さんへの返事は迷うまでもなかった。いや、迷ってはいけなかった。
___もっと強い意志を持たないと。成し遂げられない。
よし、と軽く拳を握って決意を改めたAはベンチに座り直す。
今日は九十九由基に会うため、前と同じ公園で待ち合わせをしていた。
___暑いなぁ。
Aが思ったとほぼ同時にしたバイクの止まる音。
「こんにちは」
朗らかに笑う美人がそこに居た。彼女に向けて、Aも出来るだけ柔らかく笑う。
緊張しているのだ。だって、私が今から告げる言葉は彼女にとって良いモノではないから。
今日は都合をつけてくださってありがとうございます、と当たり障りのない挨拶を終えたAは静かに息を吐いた。
『あの、九十九さん…』
「うん」
『えっと、、』
ぐだぐだと言葉を詰まらせている自分に、子供を宥めるような顔で微笑んだ九十九を見たAは、やっとの思いでまた口を開く。
『私、九十九さんと一緒には行けません』
「いいよ。わかった」
覚悟をして、ごめんなさいと頭を下げたAにとって、それはあまりにもあっさりとした返しだった。
拍子抜けしたというように九十九を見上げる。
「残念だけどね。君が決めたなら構わないよ」
そう力強く笑った九十九に、普段バカ騒ぎする高校生くらいとしか交流がないからか、Aは少なからず憧れを抱いた。かっこいい、と。
___Aが返事を伝えた後は少し話して解散となった。
それから暫く、九十九は『お身体に気をつけてください』と言ったAの帰って行った方向を見ていた。
___残念。
夏油くんが "非術師を皆殺しにすればいい" と言ったことを知れば、優しいAちゃんは
夏油くんが事を起こしてしまわぬよう、道を踏み外さぬよう、敢えてこっち側に来ると思ったのに。
そのために、聡明なあの子のギリギリ気づく範囲で口を滑らせたのに。
_初めて会った時は泣いてばかりいたのに。
原因療法が成功すれば術師も非術師も無くなり、夏油くんの気持ちも解決するかもしれない。けれど彼女には決意があるらしい。
「子供の成長って早いな」
九十九の零れ落ちた声だけがその場所に残っていた。
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藤宮(プロフ) - さくらさん» コメント、応援ありがとうございます!!頑張りますね、これからもお付き合い下さい! (2020年10月29日 20時) (レス) id: 6816ef7f40 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - コメント失礼します!楽しすぎて一気に見てしまいました!これからも応援してます!更新頑張ってください!! (2020年10月22日 21時) (レス) id: af1bba7450 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - 露亞さん» 申し訳ないんですが、ムウさん?という方ではないです…。好きな作者さんなんですか?応援ありがとうございます!ご期待に応えられるよう頑張ります!! (2020年7月5日 22時) (レス) id: 9eeede9267 (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ムウ…さん?あ、違ったらごめんなさい!更新頑張ってください!! (2020年7月1日 19時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - みーさん» いやもう、コメント下さるのが既に優しいっていうか…本当ありがとうございます!( ´ ` *) (2020年5月9日 14時) (レス) id: a3f9ffe9e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年3月15日 4時