罪ななつ ページ9
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『じゃあ行ってきます』
お昼を過ぎた頃、Aは私にそう言った。
あの子は呪詛師を殺しに行く。
殺すという行為は人として褒められたことではないだろう。しかし相手は呪詛師。私達呪術師にとっては殺してくれるなら万々歳だ。
Aは犠牲と代償がなければ力を得ることが出来ない。
つまりは彼女にとっても上の方々にとっても都合がよく、お互い良い言葉を並べて利用し合っているだけ。
母親としてはそれが心配なのだけど…。
我が家の娘として生まれた以上、呪術師として生きていく未来は避けられない。
この利用関係があの子には必要なことかもしれないと思うと止めることも出来ないのだ。
それにAの術式を知っている者はひと握りにも満たない数で、裏切りがない限りはそれ以外の人に力を利用されることは無いはず。
無理は絶対にしないとAと約束もした。バレない程度に護衛も付けた。
だから今日もあの子は無事に帰って来る。そう信じるしかない。
「あの…」
門に立っていた私に小さな声がかかった。
来客の予定は無かったはずだと目を向ければ、白髪に碧眼の少年が立っている。
確か名は、五条悟。呪術界では有名な子供だ。
「何かしら?お付きの者は居ないの?」
「えっと、一人で来た…」
五条くんはそこまで言ってから声を小さくし「でも勝手について来てる」と話してくれた。確かに隠れて来てるようだ。
彼の用事を聞けば娘に会いに来たようで。お忍びの来たのかと思うと少し微笑ましい。
「ごめんなさい、Aはさっき出かけたからまだ帰ってこないと思うわ」
入れ違いになってしまったことを話すと五条くんは眉を下げた。僅かな変化だったが悲しませてしまって心が痛む。
しかし彼は、諦めるつもりは無いらしく。
少し顔を赤らめて、手を弄りながら、「待ってても良い?」と言う五条くんを見て私は察した。
親として複雑な気持ちもあるが快く部屋に通してあげよう。
『___ママ?』
今日は珍しく髪を乾かして欲しいと甘えたAに呼ばれ、はっとする。
今日もまた、無事に帰ってきてくれた。それだけで、生きていてくれるだけで私は嬉しい。
「なんでもないわ」
そう言って微笑む。
__しかし五条くん。
娘をバカにしているとはどういうことかな。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時