罪むっつ ページ8
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バシャ、と音を立てて湯船から出る。
お風呂に入ればさっきまでの不快な気持ちも無くなってすっきりした。
体を洗う前にも自分で匂いを嗅いで見たけど、やっぱり血の匂いはしなかったな。なんで五条は分かったんだろう。
もしかして…目だけじゃなく、鼻も良いとか?
だとしたら恵まれ過ぎでしょ…。
恵まれたからこその苦労があるのは私も知っている。……でも、恵まれなかったからこその苦労もあるのだ。
術式に恵まれなかった私としては彼が羨ましい。
彼はどうだろう?強く生まれた五条は、弱い私を羨んだりしたことあるかな…?
うーん…。いつも自分の強さと私の弱さを比べてるから無いかもしれない。
そう考えながら廊下を歩き、母の部屋の前で正座をする。
『失礼します、母様。今お時間よろしいでしょうか』
許可が降りるのを待ってから部屋に入り母にタオルを差し出した。
『ママ、髪乾かして?』
私の言葉を聞いた母はくすくすと笑う。
「今日は甘えん坊ね。いらっしゃい」
どうやら書類仕事をしていたらしい母は、その手を止めて優しく私を引き寄せてくれた。
しかし、嬉しさで口角を上げながら身を委ねていた私に母はあの名前を口にする。
「五条くんはもう帰ってしまったの?」
その言葉を聞いて気分が下がった。
母も呪術師だ。
常に一緒に居られるわけではないし家の立場もあり忙しい。こうして甘えられる時間は私にとって貴重なものだ。
それをアイツの名前ひとつで邪魔されるのが気に食わない。
『私、アイツのこと嫌い…』
「あら珍しい。どうして?」
………理由を、話して良いのだろうか。
きっかけはアイツが私に突っかかったこと。
五条に何かした覚えは無いのだが
私を見下してバカにするから嫌いだと思った。
憎いと思った。
しかし彼も御三家だ。
彼の悪い点を言ってしまっていいものか……。
少し悩んだが、嫌いな五条に気を使う必要などないという結論に至る。
『アイツ、私のことバカにするの』
「五条くんが?」
『そうだよ。………信じられない?』
私よりも沢山のものを持っている五条だ。
もし、もしも母が私より五条を信じたら……。
そんなことを考えてしまった私の頭を母は安心させるように撫でる。
「そんなわけないでしょう。私は貴女を信じるわ」
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時