罪よそじ あまり ななつ ページ49
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『……いたい』
いたいのはどれだったか。心の方かもしれないが、手首を見てそう呟いた。
実際は全く痛くなんてないし強く掴まれていた訳でもない。しかし私の言葉で、離してほしいと思っても離されなかった手は、簡単にパッと離された。
少し焦りの戻った表情と、痛かったのかと伺うような視線。
普段の五条からは考えられない態度に笑ってしまいそうと内心思ったが、さっきまでの話で気分は最底辺なわけで。そう易々と上がりはしない。
いやむしろ、急変する彼の態度に怒りが湧いてきそう。
「…………」
『…………』
沈黙の中で、あんなこと言わなくても良かったのにと後悔した。
私の気持ちなんて言って、一体何になるのか。
私の気持ちをまともに聴いたことはあったか…なんて。言ってどうするの。聞いて欲しかったって?五条に?
そんなこと、する必要なんて無い。五条にそんな責任は無い。
(私のエゴじゃん、)
だけど、謝るのも何だか癪だ。
『ねぇ、どうしたの?』
「…………」
返事は無かったが、私は一人で話し出す。
『会合の話…は覚えてないけど、本当にデートじゃない』
だからそこは勘違いしないでねと付け足して五条を見たが、やはり返事は無くて少し落胆した。
小さく息を吐き出してから、まぁいいかと区切りを付けて『そろそろ休みたい』と言い、部屋を出るよう催促する。
(…??)
……が、五条は動かない。部屋を出るどころか私に近づいて来た。そして私の目の前で止まる。
何も言わずに目を上げると、五条の白く少し冷たい右手が私の左頬に添えられた。大人であることを実感させるような角張った親指の腹で目尻を撫でられる。
(え?え??)
何してんだ、なんて言えるはずもなく…というか、びっくりし過ぎて声が出なかった。
ただただ混乱して五条を見るが、次の瞬間、視界は暗闇に包まれる。一拍置いて漂う五条の香りと程よい温もり。
___呼吸が止まるのではと錯覚するほどに。
優しく__ひどく優しく抱きしめられている。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時