罪よそじ あまり みっつ ページ45
.
私だけ。私ばっかり、いつもこうな気がして。いつまでも大人になれてない。
もう高専生なのに。もっとちゃんとしなきゃいけないのに。
『…っ、』
口を開いて声を発するつもりが、言葉が出てこなくて迷った。甚爾さんは小首を傾げる。
『…いや、です。嫌です』
今度はちゃんと聞こえるよう、はっきりと口にした。彼は一拍置いて目を瞠る。
思えば、甚爾さん相手にこんな風に否定の言葉を投げたことは無かった。今までは何かあっても最終的に私が諦めることが多かったから、甚爾さんの提案を断るのがこんなに怖いとは。
『まだ…せめて、あと、高専を卒業するまで…いえ、二年に上がるまでは…、』
自身の指先同士を絡めて、俯いてそれを見ながら途切れ途切れの言葉を紡いだ。『あ、』とか『でも』とか文にならない音を間に零しても、反応を見るのが怖くて前だけは見れない。
そもそも、私がまだ会いたいと言ったとしても甚爾さんが拒めば会えなくなるだろう。彼からすれば私を躱すことなんて容易いだろうから。
(じゃあ、もう……)
そこまで考えて顔を歪めた時、甚爾さんが小さく咳払いをするように喉を鳴らした。はっとして前を見る。
彼は私と目が合ってからゆっくりと逸らして、頭をガシガシと乱暴に掻いた。
「ぁー、ったく、」
『……?』
「…お前が適当に頷いてくれりゃ、俺だって悩まねぇっつーの」
そう言って目を合わせてから「…ホテル行くか」と零す。………………??
(ん??!)
言われてる意味が、ちょっと分かんない…。悩む?ホテル?話が突飛してないか?
『えっと、高専に戻る予定なのでホテルは必要無いです…』
控えめに返すと、そういう意味じゃねぇよと軽く笑った甚爾さんは、秘め事を話すかのようにぐっと距離を縮めた。
「_男女二人がホテルでやることっつったら決まってんだろ」
低く、甘い声で落とされるそれ。パチ、と瞬きをした後に顔がぼっと赤くなるのを感じた。
男女。二人。ホテ、ル…。
甚爾さんは口角を歪に上げて、ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「なぁ?お前なら察しがつくだろ?」
何を根拠に察しがつくなんて言ってるのか、私には分からないけれど。あぁでも、そりゃあ、察しは、ちょっと…つくっていうか…。
それって、そういうこと…?
2234人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時