罪よそじ あまり ふたつ ページ44
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『お久しぶりです。甚爾さん』
ふわりと笑う。
実は、甚爾さんと会うのは本当に久しぶりだ。
元々は禪院家の庭の奥の…私と甚爾さんしか知らない密会場所で会っていたが、彼が家を出てからは彼の方から時々会いに来てくれる程度だった。
それが最近はぱったり無くなってしまったので、こうして無理に会う約束をしたのだ。
「悪びれた様子が全く無いな」
そう、約束をつけた話を出される。
『良いじゃないですか。甚爾さんも会いたかったでしょう?』
甚爾さんは私の言葉を聞いて、失礼にも鼻で笑った後、「お前と会うのは大変なんだよ」と言って私をじっと見つめた。私も何となく見つめ返す。
会わない間に彼がなにをしていたか、私は全く知らない。けれど何か変わっているのは分かった。
雰囲気が大人っぽくなった…というか、色気が増したというか…。
「お前は_……」
『はい?』
「本当に変わったな」
綺麗になった、と言われた。私はそれに少し驚く。
そりゃあ、出会った頃から何年も経ってるし変わったのは当たり前だろう。でもその何年もの間に会わなかったわけでは無く、最近会ってなかっただけなのに…。今日はやけに褒められる。
『どうしたんですか?珍しい』
おかしくて、思わず笑ってしまった。甚爾さんは綺麗な眉を歪める。
「お前こそ、会わねぇ間に敬語なんて使うようになってるだろ」
『大人になったんですよ。私も高専生ですから』
そう言えば昔は割とタメ語だった気もする。
また笑った私を他所に、甚爾さんは「そうか、お前も高専生か」と小さく呟いた。
『甚爾さん…?』
「なぁA」
久しぶりに名前を呼んでくれたのに喜ぶことも出来ないくらい、彼は真面目な顔をして口を開く。
「もう、会うのは止めねぇか」
『…え、』
顔が強ばった。何を言われたのか、一瞬分からない程に予想外で。
「お前と俺の立場は違い過ぎる。分かってるだろ」
『…でも、今までは_』
「今までは、な。…お前は呪術師だろ」
『っ、』
その通りだった。私が会いたかったから会っていたけど、本当ならそれさえしてはいけないのに。
(私が、知らないふりをしていただけで…)
甚爾さんの方がよっぽど現実を見ている。ちゃんと分かってたんだ。
…………嫌だなぁ。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時