罪よそじ ページ42
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「_っしょ、硝子?」
Aの言葉で重苦しい沈黙が訪れた後、夏油が上擦った声で呼んだ。驚いた様子で固まっていた家入がその声ではっとする。
「いやいや。彼氏がいるなんて話、聞いたこと無い」
「私も無いな」
いないはず。いないはずなのだ。…じゃあ、デートとは一体何のことだろうか。
比喩かもしれない。いやでも、Aが比喩でそんなことを言うとは思えないし…。
夏油と家入は若干焦った様子で目を合わせるが、Aに彼氏がいるやらいないやらの知りたいことは分からない。
((どうだろう……))
二人は苦笑いを零した。
Aに今まで彼氏がいるなんて話を聞いた事がないのは事実だが、『いない』と本人から聞いたわけではない。三人が勝手にいないと決めつけて、五条の恋を応援していた(つもり)
「…悟」
「…なんだよ」
「拗ねてるかい?」
夏油の言葉に、五条は彼の方を見る。面白いことになったというのが表情から丸分かりだった。五条はそれを理解して顔を歪める。
「………………べつに」
(拗ねてんじゃん)
口を曲げて言った五条から目線を逸らしつつ家入が思った。
そう、五条は拗ねている。
聞きたくなかった。デートなんて言葉。Aの初めてのデート相手もこれからの相手も、全部全部、自分だけであって欲しかった。
今の五条では口にも出来ないことだが、あわよくばAの全てが欲しかった。
___でもそれは、叶うことではない。
「諦める?」
家入が平坦な声で言う。正直、彼女にとっては五条が振られようがどうでもいい。むしろ面白いと思っている。
五条はその質問を聞いて、なんとも綺麗に笑った。
「_まさか」
本気で聞いてるというのか。諦めれるものならとっくに諦めている、と。
何年も思い続けているのだ。今更踏ん切りがつくものでは無いし、そもそもそんな気は全くない。
五条は、Aのことに関しては臆病にも卑怯にもなる。でも、それがどんなに惨めな姿であろうとも、彼女を手に入れるのに必要な過程だと言うのならば惜しくはない。
(諦めるなんて有り得ねぇな)
例え彼女に選んだ相手がいようとも、手放してしまうものかと。
「欲しいに決まってんだろ」
それ程までに、惚れ込んでしまってるのだろう。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時