罪はたち あまり よっつ ページ26
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『……は、はぁい…』
口から出たのはこの上なく情けない声だったがこの際どうでもいい。
こっっわ。なんなの、五条って怒ると超怖いんだけど。二人で帰るわけ?無理無理無理。
こんなにキレた五条と一緒なんて私の心臓が持たないわ、と垂れた冷や汗を片手で拭うと、上から堪えたような笑い声が聞こえて。
えっ、と反射的に上を向く。
「ふ、ははっ、情けねぇ顔」
(え、五条、笑って__)
恐らく、初めて目にしただろう彼の純粋な笑顔に目を奪われた。
手の甲で口元を隠しながら、くしゃりと空色の瞳を歪ませて耐えきれないというように笑っている。
それを、ただ惹かれたように私は見つめていた。
付き合いは随分長いのに、お互い笑いあったことなどない事実に今更気づいた、とか。
もしかしたら、度を過ぎてしまって怒りがその先をいったのでは、とか。
冷静な思考は確かある筈なのに、五条はこんなに綺麗に笑う人なのかって、それだけが思考の大半を占めているような。
彼が宝石にでもなったかのように、輝いて見える気がして。
「別にそこまで怖がらせるつもりじゃなかった」
(…あれ、おかしいな、)
いつもよりは優しい言葉をたった一つかけられただけなのに。
(……ヘンな感じだ)
いつもより、体温が熱い。
………………
…………なんて、
(っあるわけないよね!!!!)
ばっ!と五条から距離をとって、さっきまでの思考を無理矢理追い出した。
何今の?!私が意識してるみたいじゃん?!?
ちょっとギャップにやられただけだし!!!
全然違う!!!と後ろを向いて、勢い良く手で顔を扇ぐ。
いきなり距離を取っては反対を向いた私を、五条はきっと訝しげに見ていることだろう。
あぁ、どうしよう。考えれば考えるだけ恥ずかしい。もう五条が怒ってるかもとかどうでもいい。
「?……なにやって、」
『五条!』
か、帰ろうか!と手を取って引っ張ると何故か引き止められた。
「オマエ熱あんの?急に手握ってくるし…」
そんな変な顔しなくても、五条だって急に触れてくることあったでしょ。自分は良くて私はダメなんですか…!
私は恥ずかしいから早く帰りたいの!!
『うん、きっと熱があるから、』
…そうじゃなきゃ、五条にあんな事思うわけがない。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時