罪とお あまり ふたつ ページ14
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Aの屋敷の縁側に座る五条に、彼女の母が話しかける。
「ごめんね五条くん。大変だったでしょう?」
「…うん」
背丈もほとんど変わらないAを運ぶのは本当に大変だったのだろう。その気持ちを隠さず返事をした五条に母は微笑み、謝意を述べた。
「容態は?」
「安定してるけど、熱が高くて…」
慣れない環境で疲れていたのだろうか。Aはあまり甘えるということをしないからずっと溜め込んでいたのかも。
その言葉を聞いた五条ははっとした。
なんだか、自分のせいでもある気がしたのだ。
随分と沈んだ表情になった五条に母は気を聞かせ、様子を見ていくかと聞く。五条は即答でこれでもかと言うほど頷いた。
Aの部屋で二人きりになった五条は、Aの頬に手を当てる。
確かに熱い。
………俺のせいだろうか。
Aが自分を嫌っていると知った上で踏み込み過ぎたのだろうか。
今回のことで今まで以上にAから拒絶されてしまうだろうか。
だとしても、やめろと言われても、踏み込むことをやめたり出来ない。自分では、もうどうしようもないのだ。
五条はAが好きだ。
それはもう、本当に好きだ。
しかし五条本人はそれに気づいていない。
初めて会い、目が合って、言葉を交わした。
あのときから自分の心を占領し、深く跡を残していくAが気に食わない。
未だ知らぬこの感情が不快でたまらない。
自分も理解していない感情をAに伝えるなど不可能。
理解したとしてもAに伝えられるか分からない。
今だって、全く素直に話せないのだから。
「……ごめん」
初めて彼女に謝罪した。
謝るべきことが多すぎて何の意味を持っているかも分からないが、それは確かに心からの気持ちだった。
今だからこそ言えること。
彼女が起きていたのなら絶対に言わない。
彼女の弱った姿を見なければ絶対に言わない。
Aは俺に弱った姿は見せたくはなかっただろう。
これからだって見せてはくれないだろう。
「…っ」
潤んだ瞳が、弱々しい声が、赤らんだ頬が、
脳裏に焼き付いて離れない。
Aの言動一つ一つが、また自分の心を掻き乱して跡を残す。
_____全部ぜんぶ、俺だけに見せて。
この独占欲も、気味が悪い。
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藤宮(プロフ) - 暁郗さん» 母 は 強 し 。……そう、母は強し……母は強し……コメント……ありがとうごぜェます……。 (2021年2月23日 20時) (レス) id: cdb1df32dd (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 母 は 強 し 。 (2021年2月23日 13時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - かわさん» えー?!同じ苗字ですか?!めっちゃミラクルですね!何だか私も嬉しいです!! (2020年12月31日 21時) (レス) id: c97ecbdc86 (このIDを非表示/違反報告)
かわ - まさかの同性の人が出てきて嬉しかったです!現実でも同じ苗字の人と親戚以外であったことがないので! (2020年12月31日 17時) (レス) id: e92a741f95 (このIDを非表示/違反報告)
藤宮(プロフ) - mimiさん» 悪いなんて!むしろ丁寧じゃないですか!凄く褒めて下さるのでめっちゃ嬉しいです。どうぞお楽しみ下さい!!! (2020年12月5日 19時) (レス) id: c231945d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤宮 | 作成日時:2020年4月22日 0時