意思と鏡 【文豪ストレイドッグス】【文スト】

　　　　肆話 ページ12

其の儘人にぶつかり乍ら我武者羅に走っていた私はとうとう少年にぶつかって転んでしまった。

　少年の持っていた荷物が辺りに散らばる。慌てて拾い集める。

「済みません！私が不注意だったばかりに」

「いや、僕は大丈夫。君こそ大丈夫？転んでたけど、怪我ない？」

　ろくに周りも見ずに走っていてぶつかったのに少年は私を気遣って呉れた。まるで彼が私にぶつかって怪我を負わせたかの様な慌てぶりだ。

　アシンメトリーに大雑把に切られた白髪、紫と金の合い混じった瞳の少年。多分、とても優しい人なんだろうな。こんな人の職場ってどんな所なのだろう。

私には縁遠い世界か。

「じゃぁ、気を付けて」

　荷物を拾い終わりお詫びを云って立ち去ろうとした時、少年が云った。



　彼と別れて街を彷徨う。すでに日が暮れ始めている。夜は危険。ポートマフィアの様な異能組織が動く点に於いては亦とない機会だけど、逆に殺されてしまう可能性の方が高い。

　今夜寝る場所とご飯を確保しなきゃ。食料はコンビニとかで済ませられるけど寝る場所は難しい。

　足が付かなくて安全な場所。

　結局夕方丸々かかって寝る場所を見つけた。

　空には淡く雲が掛かって幻想的だった。怪奇渦巻くと謂われる此の街に何だかふさわしく思えた。

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