過去考察 ページ2
Aside
寒さも厳しくなりつつある冬のある日。
当時私は一般的な高校一年生だった。
いつも通りの日常を送っており、その日は委員会で遅くまで学校に残っていた。
＿＿午後6時30分、学校を出て冷たい北風が吹き付ける中、徒歩で帰路についていた時。
尋常でない程の
それは、私の母のものだった。
私の父と母は二人とも呪術師で、父は二年前に呪霊に殺され殉死。私は跡継ぎのため、ひっそり呪術を学んでいた。
その母の残穢を見付け、私は家へとひた走る。
風が吹き当たって顔面が痛い程に冷えきっても。
...そして、家の扉を開ける。
＿＿玄関から居間へ繋ぐ廊下に、赤黒い線が引かれていた。
血生臭い匂いから直ぐに分かった。
瞬間、私の顔は青冷め、脚は危険信号を鳴らすようにガクガクと震える。
ピチャ...ピチャ.....と生々しい音を立てながら、「何か」が床を這って此方に向かってきた。
嫌だ、怖い。誰か...助けて...!!
そう心の中でどれほど叫んだ事か。
恐怖、それから諦めで瞼をぎゅっと瞑った。
「......A、...A...」
...鼓膜を撫でるような声色。苦しくて、喉から絞り出すような声。でも、優しい声。
『...母さん......??』
その正体は母だと判明した。声だけでしか分からない。容姿は醜いほどボロボロになっていたから。
『....母さん?? ....ねぇ、どうしたの...? 帰り道、母さんの残穢見付けて...』
「...ごめ....んね」
＿＿母さん??
不意に脳を過ったのは「死」の一文字。
『...っ?! 嫌だ、...母さん?? 何で母さんが謝るの.....』
視界がぼやけ、空間が歪む。鼻の奥がツン、と痛んで、喉から掠れるような声が溢れ落ちた。
...嫌だ。死なないで....!!
そんな思いも虚しく、母さんは生命の終わりを迎えた。
置いていかれた。突然すぎやしないか?
現実を受け止められず、情緒がめちゃめちゃになった私は筆入れからハサミを取り出した。
母さんの後を追う。そう思って首筋に刃を押し当てた時＿＿
「＿＿ああ、君がそいつの娘??
...ごめん、急に闇堕ちして一般人殺しだしたから俺が殺したわ」
そんな謝罪の欠片もない声が背後から聞こえたんだ。
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作者名：辛味噌らぁめん | 作成日時：2021年9月12日 11時
