英雄から十四歩 ページ15
幼い頃に見た、夢を思い出した。
私は暗い部屋にひとりぼっちで、蹲って泣いていた。何かがあったのか、酷く悲しくて、いくら泣いても虚しいだけだった。
そんな私の元へ、現れるのはいつも同じ男。
慰めるような優しい声音で、私に地獄を突きつけるのだ。
君を助けに来る人はもう誰もいない、私は一人になったのだ。甘く蕩けてしまいそうなはにかんだ声でさも嬉しそうにそう言うのだ。
そしてその夢が、今ほとんど現実となって私を苛んでいる。
「ねぇ、もういい加減諦めなよ。君の上司も、後輩も、結局は君を見捨てたんだよ。我が身可愛さにねぇ」
『そんなはずっ……』
奴は夢の男のように甘くねっとりと私の混乱を包む。
蕩けてしまいそうな表情で残酷に告げる。
「ないって言いたいの?」
じっと目を見つめられ、答えに窮する。
「言えないよね、そんなこと。だってここに来てから誰一人君を助けに来る人はいない。君が信頼を寄せていたマルコロットもスパイだった」
『まだ……』
奴は眉を上げ、口を奇妙に歪めた。
「まだ?まだ、なんて言うんだ?まだ希望はある?まだ君は捨てられていない?まだ君を思ってくれる人がいる?
くだらないねぇ。……そんな確証がどこにある?君は最後まで希望とやらを捨てないかもしれないけど、現実を見なよ」
顎を持たれ、無理矢理に視線を合わせられる。
奴の真っ暗な目に映った私の顔は、酷く不安そうで苦痛に歪んでいる。
「だってさ、あれからもう何年経ったと思う?」
私が奴にここへ拉致されてから、既に四年以上経っていた。
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こんにちは - とても面白いので更新期待してます……よろしくお願いします! (2022年8月29日 18時) (レス) @page15 id: 561b81e9d3 (このIDを非表示/違反報告)
あの。(プロフ) - ここさん» ありがとうございます。私情でしばらく筆を置いてしまい、お待たせしてしまっています。これから更新していこうと思っていますので良ければ気長に待って貰えると嬉しいです。 (2020年2月9日 8時) (レス) id: d990767fad (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - とても面白かったです(^-^) 更新をお願い致します!! (2019年12月29日 2時) (レス) id: 9ab82a9f0f (このIDを非表示/違反報告)
あの。(プロフ) - あかさたなさんさん» 嬉しいコメントありがとうございます。遅筆ですが自分なりに頑張っていきたいと思います。励みになります。 (2019年10月6日 19時) (レス) id: d990767fad (このIDを非表示/違反報告)
あかさたなさん - お話面白かったです。これからも頑張ってください。 (2019年10月6日 16時) (レス) id: e7421af52a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あの。 | 作成日時:2019年3月23日 16時