誰も死なない優しいヤンデレのような話 (ページ15)

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やんでますか？……此度の審神者は不思議な奴だな side三日月宗近ページ15

※場面飛びます
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『死にたくはないので』

奴はそう言った。

なら何故此処に来たのだ。
その問いに答えるものはいない。

……はずだった。

『お金が無いんですよ。どれだけあっても』

驚いた。音もなく、まるで粟田口の短刀達のように突如として現れた奴に。

｢……お主はそれしか言わぬな。それではまるで鸚鵡の様だぞ。
それとも、そうすることでぼろを出さないようにでもしておるのか？｣

あくまでも驚きはひた隠し、冷静を装って返す。
俺は爺だからな、面の皮は厚い。

『……貴方は……まるで貴族のようですね。人の心を揺さぶるのがお上手だ』

奴の表情は面で隠されていて読めない。

ただ、口元は僅かに弧を描いていた。

───気に食わぬな

得体の知れない感情がふと、自分の中に蠢いているのを感じた。

｢ふむ、これは存外、面白くなりそうだな｣

『そうなると、私の胃痛も一層酷くなりそうなので、是非とも御遠慮願いたいのですが』

言いながら奴は俺を手入れ部屋に手招き、慣れているような手つきで手入れの支度を整えていた。

｢真逆俺が真っ先に手入れを受けさせて貰えるとはなぁ｣

皮肉を込めて言えば、伝わったのか

『仕方が無いでしょう。貴方よりも重症の方は皆様、｢貴様なんぞの手入れは受けん｣の一点張りですし。貴方自身、かなりの重症ですから』

と、少々拗ねたような返答が返ってきた。

｢だろうなぁ｣

そう呟けば、どちらの意で受け取ったのか、はたまた集中しているのか、奴からの返事は聞けなかった。

口元に手をやれば、奴と同じように己のそれも弧を描いていた。