side審神者 其の参 ページ13
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加州が縄を縛り終えてから、停止の術を解く。
と同時に3人が動き出す。
｢？！なんで縛られてるの？！｣
｢くっ、解けない……｣
｢えっと……こ、これは？｣
それぞれが口々に体を捻りながら喋り出す。
『少しいいですか？』
返事を求めずに続ける。
『私は畑を耕そうと思ってここに来たわけですが、皆様も目的は同じでは？』
黒髪の、利発そうな中学生くらいの刀剣が首を縦に振ることで、肯定の意を呈した。
『だとしたら私たちに争う理由はありません。
とりあえず雪かきしませんか』
先ほどと変わらない黒髪の刀剣が、
｢いいよ。けど交換条件だ｣
と言う。縛られているにもかかわらず、無闇に下手に出ない振る舞いが、潜ってきた修羅場の数を思い起こさせる。
『交換条件ですか』
｢そ、俺たちはあんたと畑仕事をする代わりに、あんたは俺たちの手入れをしてよ｣
『手入れ、ですか……？』
首を傾げると、黒髪の刀剣の隣の、白髪の猫目の刀剣が忌々しそうに吐き出す。
｢手入れも知らないなんてな……｣
すると5匹の虎に囲われた、色素の薄い刀剣が、こちらを窺うように聞く。
｢あ、あの……初心者って、ほ、本当なんですか……？｣
『加州清光さんと大和守安定さんですね。……ええ、事実ですよ。だから私は貴方方の名前はおろか、初歩的なことすらわからないのです』
残念なことに、此処の本丸にはこんのすけがいませんから、教えを乞うことすら叶いません、と皮肉気に言う。
｢え？でも主、俺にいつも手入れしてくれるじゃん｣
と、加州。
『そうだけど、多分この方達が言っているのはそういうことじゃあないんだよ。
恐らく、ですけど、貴方方の言う手入れは、きっと私が、審神者の力を介した手入れのことだと考えたのですが』
違いますか、と尋ねれば、首が縦に振られ、肯定の返答がある。
『私はその、審神者の力、をまだ上手く扱えないのです。自衛のため、と叩き込まれた結界ならともかく。
学んでもいない手入れなど、貴方方にとっても不愉快極まりないのでは？』
半分そうだろうと決めてかかった質問だけに、返ってきた意外な言葉に、私は瞬間の間、呆けてしまった。
｢いや、手入れなんてしばらく受けてないから、どんなに酷くても無いよりましじゃない？｣
あぁ、そうだった、と、心の中で呟く。
『わかりました。では今日は畑仕事はなしで、此処の本丸の皆様の手入れをしましょう』
そう言うと、彼らは酷く嬉しそうな、哀しそうな妙な顔をした。
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作者名：あの。 | 作成日時：2019年2月9日 17時
