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(F)
「あっ、おい！それ俺の唐揚げ！！」
「あぇ？ほほってるふぁ、ひああいかぁあっへ」
「残ってるんじゃなくて、最後まで残してたんだよ！！」
「ゴクンっ…わりぃわりぃ」
「この食い意地モンスター！！」
「は？少食女みたいな奴に言われたくねーし！」
「はぁー？」
いつもの昼ご飯も、おかずを取った取られたで大騒ぎ。北山が狙うのはいつもお肉で、俺もさすがに男の子だから初めは取っ組み合いの喧嘩をしてたけど
もう…慣れた。
休み時間には毎回こっちのクラスまで顔を出す北山も、もはや名物みたいになっていて
仲良し四人組ーーー、なんて弄られるようになってた。
「今日も平和だねー」
「そうだね、渉くん」
「てゆーか、良く会話出来るねあの二人」
「…ふふ、ホントに二人は仲良しだね」
「「仲良くねぇー！！」」
俺と北山の犬猿の仲も、学園公認みたいなもんだ。
そんな感じで季節は巡って、学校は文化祭ムード一色。
もちろん、俺達も例外じゃなく放課後も残って出し物の練習やセット作りに追われていた。
「藤ヶ谷くん、衣装出来たからサイズ合わせで試着してくれない？」
「うん」
衣装担当の女の子が作ってくれた衣装を
空き教室で着替えた。
まさかこれを自分が着ることになろうとは一切思ってなかったけど、実際着てみて何だか実感が湧いてくる…
(俺が、マイコの王子様なんだ)
中世の王子様を模した衣装を身に纏った俺が、鏡の中で笑ってる。
俺達の出し物は王道だけど白雪姫で
俺が王子様、マイコが白雪姫。
指名された時は本当に恥ずかしかったし、地味で根暗な俺なんて…って思ってたけれど
マイコの恥ずかしそうに、だけど嬉しそうハニカム姿を見て
初めて北山に勝った。
そう思った。
劇の終盤には、キスシーンもある。
俺とマイコの…否、俺のファーストキスになるだろう記念のシーン。
それを、正々堂々みんなの前で北山に見せつけて俺の勝利を叩き付けてやる。
マイコは、俺のものなんだよ。
渉の親友だって俺だけ。
北山は、相応しくない。
北山のショックを受けた腑抜け面を想像した鏡の中の俺は、宣戦布告をしてきたあの時の北山のように
楽しそうな…愉しそうな顔をしていた。
果たしてその笑みが、何を意味するのか
この時の俺には良く分かっていなかった。
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作者名：Fuikky | 作成日時：2018年6月5日 20時
