28話目 ページ28
「可愛い…可愛、あっ、この鼻筋は俺にそっくり！」
「眉毛は俺に似てるな。」
コットですやすやと眠る赤ちゃんを食い入るように見て小声で話す二人。
久美子ちゃんは「また明日来るね。」と名残惜しそうに署に戻っていった。
「いくら見てても飽きないな。」
「うん、本当に可愛い。私のお腹の中でこんな可愛い子が育ってたなんて。」
「あ、起きた？A、泣いてる、どうしよう！」
「おむつかな？お腹減ったのかな〜？」
ほんの数時間前に産まれたばかりだというのに、顔を真っ赤にして大声で泣いて元気いっぱい。
「おむつ…じゃない。って事はお腹？」
確か看護師さん、胸の状態見るから呼んでって言ってたっけ？
ナースコールを押すと直ぐに来てくれ、「お、泣いてるね〜。」と赤ちゃんに声を掛けた。
「パパ逹はちょっと出ててもらおうかな？」
「何か…処置でも？具合が「マッサージするの。美味しい良い母乳が出るようにね〜。」」
源はハッとした表情をして、剛を連れて廊下に出て行く。
「さ、ママは頑張ろうか〜？」
ホットタオルを胸に乗せて温められ…噂に聞く地獄のマッサージ！！
「い、痛い、痛いです。」
「うん、痛いよね〜。でもしっかりマッサージして乳管を通しておかないと後で辛い思いするのはママだから。」
「つ、辛い…思いですか？」
「そう。さぁ沢山良い母乳出す為に頑張ろう〜！」
「はっ、はいぃ〜！」
私は歯を食い縛り、情けない声で返事をするしかなかった…。
「あ、A、噎せてるよ！」
産後3日目、マッサージに耐えたお陰か、赤ちゃんが噎せてしまう程の母乳が出て慌てる。
「ごめんね、出過ぎちゃうね。」
口から乳頭を外そうとしても、噎せながらくわえて離そうとしない…。
「食い意地は…剛か？」
「俺！？そんなに食い意地張ってる！？」
「確かに剛はよく食べるよね。」
「…Aまで〜。」
和やかな空気に包まれ、赤ちゃんは眠そうに小さな欠伸をした。
産後6日目、母子共に健康で無事に退院。
剛はどうしても離れられない現場に当たったらしく、源が迎えに来てくれた。
「足元に気を付けて。」
「ん、大丈夫だよ。あ〜、久しぶりの我が家だ〜。」
「赤ちゃん、ここに寝かせるか？」
可愛らしい藤のかごを持ってきて、ソファの上に置く。
「あれ？こんなの持ってな「隊長が持ってきた。お祝いだとさ。」」
フリルたっぷりのかごの中で眠る姿はまるで天使で、源は締まりの無い顔で眺め続けていた。
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作者名：fugurifurifuri0 | 作成日時：2020年12月25日 15時
