24話目 ページ24
「ほら、綾野！注いで！」
「た、隊長、飲み過「さっさと注ぐ！」」
帰ってきた剛が食卓に着くなり、酌を求める久美子ちゃん…。
「何か嫌な事でもあったんすか〜？」
半笑いの顔で唐揚げを口に放り込み、源は私を見て首を傾げる。
「そうだよ、どうしたの？久美子ちゃんが荒れるなんて珍しい…。」
「そりゃ…私だって色々と思うところがあるのよ。Aがもうすぐお母さんだなんて…何だか…寂しい…。」
「隊長！ビール溢れてるっ！」
よよよ…とテーブルに突っ伏した久美子ちゃんの手が傾き、慌ててその手からグラスを取り上げる。
「返せ、星野、ビール！」
「久美子ちゃん、お水飲も？ね？」
私が飲んでいた水を渡すと一気に飲み干し、次は居眠りを始めた。
「隊長のこんな姿、初めて見た気がする〜。」
「飯、リビングに運ぶか？」
「そうだね、寝かしといてあげよ。」
ブランケットを眠る肩にそっと掛け、赤ちゃんが動いたのでお腹を撫でる。
「寂しい…か。」
「どうした？痛むのか？」
不安そうな顔で源が聞いてきた。
「大丈夫。それより久美子ちゃんが寂しいって…。私、親不孝しちゃったのかな。」
「うーん、娘を嫁に出す心境？Aが大人になっちゃって寂しい…とか？」
剛は口をもぐもぐと動かし、パチンとウインクして微笑む。
「心配かけないように…しっかりと3人で幸せにならないとな。」
「あ、4人です〜！忘れんなよ、バカ。」
源を指差して、私のお腹に触れてくる。
「忘れてねぇよ！言葉のあや「しーっ、起きちゃうよ〜。」」
二人はゆっくりと振り向いて、久美子ちゃんが眠っている事を確認すると安心したようにため息をついた。
「今日から…正期産かぁ。」
お腹の張り止めの副作用と戦い続けた甲斐があって、いつ産まれてもおかしくない時期に無事に突入。
予定日までは後3週間。
カレンダーに花丸が付いている予定日を気の引き締まった思いで見つめる。
リビングの片隅には気の早い剛が組み立てたベビーベッドがあり、中には源が買ってきたタオル地のウサギやクマのぬいぐるみが横たわっていた。
「っ、痛っ。痛いよ〜、胎内暴力反対〜。」
ドンドコと赤ちゃんは暴れ回り、お腹の中はもう狭いよと言ってるみたい。
「あ、また張ってきた…。」
ソファに横になり、張りが収まるのを撫でながらやり過ごすのももう慣れたもの。
寝転んでると眠くなってきて、お昼寝しようとブランケットをお腹に掛けた。
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作者名：fugurifurifuri0 | 作成日時：2020年12月25日 15時
