16話目 ページ16
「うわぁ、可愛い〜。美形〜。」
剛は貰った超音波写真を締まりのない顔で撫でる。
私は源と顔を見合わせて苦笑い。
「と、俺らはこのまま署に行くけど帰れるか？」
「うん、大丈夫。」
「気を付けて帰れよ。帰ったらメールをくれ。」
二人に最寄り駅まで送ってもらい、駅のベンチに腰を下ろした。
「…ちょっと気持ち悪いな。」
妊娠前には気にならなかった人の些細な匂いが鼻につく。
…これから…どうなるのかな。大丈夫なのかな。
漠然と不安な気持ちに襲われ、お腹に触れて「頑張るね。」と呟いた。
「今日、署で隊長にすれ違って生きた心地がしなかった。」
「子供が出来たって言ったら…あー、想像するのも怖ぇ！」
「そう…だよね。第一関門は久美子ちゃ…あ、二人の両親は大丈夫なの？」
あっさりした物が食べたくて、今夜は水炊き(鍋)。
3人でつつきながら今後はどうしていくのかを話している。
「俺は特に心配はいらない。40前にもなって今更何も言われる事はないだろ。」
「俺んとこも大丈夫。早く落ち着けって言われてるし。」
剛は鶏肉を口に放り込んで、熱そうに目を閉じた。
「そう、なら良かった。」
お箸を置いてお茶を飲むと気持ちが悪くなってきて…。
「ごめん、ちょっと…横になるね。」
「悪阻か？吐きそうか？」
私の背中を支え、心配そうな源の顔。
剛も箸を置き、傍に来てお腹に手を当てる。
「こんなに小せぇのにAの身体に変化を起こすって、赤ちゃんってすげぇ。」
「確かに…まだ腹も出てないのにな。」
寝転がった私の額を撫でて源は微笑んだ。
「ここに居るよ〜って言ってるんだよ、きっと。あ、でも…籍とかは…どうするの？」
二人は顔を見合わせ、小首をかしげてため息を一つ。
「ちょっと…後少しだけ時間をくれ。」
「だから俺の案で良い「そんな簡単に決められる問題じゃないだろ。」」
「えっ、じゃAはどっちと「それが決められないから3人で付き合ってるんじゃないのか？」」
「う、うーん…。」
剛は頭を抱え込み、顔を歪ませて「難しい〜。」と呟く。
「もういっそ…私たちは籍を入れずに子供の認知だけとかじゃダメ「どちらの子供かわからないし、第一そんな状況を隊長が許すのか？」」
「っ、あぁ…久美子ちゃん。」
腕を組んで、眉を吊り上げて怒る顔が頭に浮かんだ。
「とにかくAは安静が一番！ね？何の心配もいらない！」
「今はそれが一番だ。」
交互にお腹を撫で、二人は目を細めた。
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作者名：fugurifurifuri0 | 作成日時：2020年12月25日 15時
