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「これ…私?」
「うん、120点満点の太もも。」
「ふっ、太もも…。」
ブランデーグラスを片手に誰かの太ももに頭を乗せるシーン。
「これもA。」
今度は和服姿で源と楽しそうに抱き合ってダンスをしている…。
背中越しやパーツだけで顔は出てないけど、私だと力説する源。
「どうして私が出るようになったの?」
「俺が頼んだ。Aじゃなきゃダメだって。」
「いつから…?」
「あー、付き合って3ヵ月過ぎた頃?」
聞いた事の無い曲ばかりでワクワクする気持ちを抑え、「無理。」と冷たく言い放った。
「無理も何も、もう衣装の発注してるから。」
「…もしかして昨日の打ち合わせって?」
「正解〜!大正解〜!」
「本当に無理「発売日に間に合わなくなるから困る!ほら、腹を括って!」」
「やだ無理、括れる訳ないでしょ!?」
暫く押し問答を繰り返し…最終的には押しきられてしまった。
「大丈夫、大丈夫!」
源に手を引かれ、嫌々スタジオに入ると緑の大きな布が壁から床に広がっている。
「これって確か「今回はCGを使って作る予定。ここで撮影して、後で合成。」」
現場を見るのは初めてで、慌ただしく動き回るスタッフさん達に圧倒された。
「あ、Aさんこちらです。」
「ほら、行ってきな。後でね。」
綺麗なお姉さんに個室に通され、鏡の前でメイクが始まる。
色んな世間話に頷き、おろおろしている間にヘアメイク終了。
…これが…私?
ふわふわと長い巻き髪、色はブラウンのウィッグを被った自分を信じられない気持ちで眺める。
付け睫で目元の印象は変わり、いかにも女の子って感じに変身していた。
「次はこちらに着替えて下さい。あ、お手伝いしますね〜。」
「えっ、これ…アリス?」
「童話の世界のお姫様らしいですよ。」
フリフリのエプロンドレスはボリュームたっぷりのパニエ付き。
手伝ってもらって何とか身に付け、これまた履き口にレースが沢山の白のニーハイ、黒のコロンとした厚底の可愛らしい靴を履く。
「さすが星野さんが選んだ衣装!Aさん可愛い〜!雰囲気もぴったり!」
「Aさんの衣装は自分の衣装よりも悩んで決められますもんね〜。」
綺麗なお姉さん二人に誉められ…恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分。
「どう?終わった〜?」
ドアをノックしながら源が入ってきて、その姿に目を見張る。
童話の世界のウサギの格好で、裾の長いタキシードのベストがよく似合っていた。
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作者名:fugurifurifuri0 | 作成日時:2020年11月27日 16時